なぜあの人は「できない理由」ばかり探すのか

専門家が社内の"抵抗勢力"になるメカニズム

ここで注目すべきは、専門家はつねに「◯◯の専門家」というかたちで、特定の領域とセットであることです。つまり、ある程度確立した分野、明確に線引きされた領域があって初めて「専門家」が存在するということです。

アリ型の専門家は変化に対応できない

線引きされた領域を極めた人が専門家であるならば、専門家とは「閉じた系」のアリ型思考を極めた人です。

皮肉なことに、専門家は、「専門家」を名乗り始めた瞬間から陳腐化との戦いになります。領域を定義して固定すること、すなわちそこで未知の領域を探るイノベーションは止めてしまうことになるからです。

組織を維持し、運営していくことは、すでに存在している特定の組織という、領域の決まった世界での勝負になります。「閉じた系」である閉鎖的な組織は、「一丸となった」行動も取りやすいため、「何をやればいいか」「どうやればいいか」が決まっている仕事では、急成長も可能になります。

しかし、これがある時点を超えて、たとえば市場環境の構造的な変化が起こると、「閉じた系」の組織の専門家集団であるがゆえに「変化に対応できない」ことになります。

イノベーションを志向するキリギリス型の部下が新たなチャレンジを提案しても、専門家であるアリ型の上司は、なまじ過去の経験や知識があるがゆえに、「できない理由」を並べるというわけです。

ここで考えなければいけないのは、企業という組織が「変化に対応できない」と、企業そのものが遅かれ早かれ存亡の危機を迎えるということでしょう。

そういう構図なので、時にアリ型の専門家はキリギリス型のイノベーターとは対立します。もともとイノベーションとは、その定義から「決まった領域の範囲を最適化する」のではなく「新しい領域をそのもの作り出す」ことが目標となります。ですから、イノベーションの対象領域においては、そもそも専門家が存在するわけがない(その定義上、もし存在するのならそれはイノベーションではない)ということになります。

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