バブル期と違って、求人倍率が上がっている背景は当然「好景気」ではない。国際通貨基金(IMF)が2024年4月に発表した「世界経済見通し(World Economic Outlook)」では、GDPランキングで日本はアメリカ、中国、ドイツに次ぐ4位。しかも、上位10カ国のうち「名目GDP成長率」が唯一マイナスという状況だ。5位のインドが成長率10%で僅差まで追い上げている。
そんな中で、出生数の減少スピードが緩まる兆しはなく、2024年に初の70万人割れが起きる可能性さえ指摘されている。要は「人は減って仕事は増えている状態」だから、求人倍率は上がっているし、これから先も下がることはない。つまり、相対的に「人の価値」は上がっているのだ。
「だから外国人労働者を雇ってなんとかする」という方策も赤信号だ。「超円安」という状況で「日本で働きたい」という外国人労働者は減っている。出稼ぎするのにわざわざ給料が目減りする国を選ぶ人はいないのだから、当然の流れだろう。
こうして冷静に状況を俯瞰して見てみると、どこにもポジティブな要素がない。筆者もネガティブな話題をしたいわけではないが、現実を見ず楽観視するのは”死”を意味する。企業はこの現実を「スタートライン」と捉え直すしかない。
相対的に「人の価値」が上がった今、「企業や仕事に人が合わせる」時代は終わったと考えなければならない。「労働力が豊富な時代」に戻ることはもうない。過去を振り返らず、「人に合わせる経営・人事戦略」に舵を切るしかないのだ。
上司選択制を導入している会社
北海道の企業が行っている「上司選択制」を知ったとき、筆者は「確かにこういう動きが出てくるだろうな」と納得した。「上司選択制」とは、上司の性格や得意・不得意をあらかじめ社内に公開し、部下たちはそれを参考に一緒に働きたい上司を選ぶというものだ。
「GOOD ACTION アワード」(リクナビNEXT主催)を受賞した取り組みで、上司とのミスマッチで退職する若者が少なくなかったことが導入のきっかけだったという。結果、離職率減を達成。これが「人に合わせる人事戦略」の好例だ。
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