「スラダン酷似ビラ」自民系候補が超絶マズい理由 「著作権法に抵触する可能性」以外の問題点も
(4)前提が違う「他者」への責任転嫁
ビラをめぐる一連の報道では、とある商店街のポスターからヒントを得たとの、陣営スタッフ発言が伝えられている。これもまた、現実を直視していない責任転嫁だと感じさせてしまう。記事では商店街の具体名は明記されていないが、おそらくこれだろうと思われるポスターがある。
そのポスターは実写で、商店街の店主ら5人が、ユニフォームを着ているもの。2023年末に掲示されて話題になり、ネットメディアを中心に「おもしろネタ」の切り口で取り上げられ、関係者コメントも報じられた。それらによると、もともと約10年前から、毎年の話題をパロディー化したポスターを制作していて、たまたま2023年は「THE FIRST SLAM DUNK」を題材にしたようだ。
つまり、同じ「元ネタ」をパロってはいるものの、そこへ至るストーリーはまったく異なる。また、商店主という「毎日のように顔をあわせる近所のおっちゃん」がキャラになりきるのと、市長選候補者(元県議)という「遠いと感じられている存在」がなるのとでは、読み手の受け取り方も異なる。別のフィールドである、商店街の例を出してしまったのは、まったくの悪手と言えるだろう。
法規制に対する意識の低さ
ここまで4つの観点から、今回のビラが「マズい理由」を考察してきた。いずれの背景にも、「選挙に勝てれば手段はいとわない」という、政治家特有の思考プロセスがあると思われる。
昨今ようやく、公職選挙法や政治資金規正法をめぐる議論が進みつつあるが、こうした政治関連法のみならず、著作権などの知的財産関連や、街頭演説とは切っても切れない道路交通法など、あらゆる法規制に対する意識が低く感じられてしまうのだ。
ここまで熱を入れて語るのには、理由がある。実は筆者自身も、かつてオリジナルの手作り選挙に挑み、惨敗した経験があるからだ。あらゆる広報物を自作し、告示日以前には公選法に触れる「事前運動」を行わないよう、最大限の注意を払っていた。それらはすべて、まっとうな選挙のあり方を提案したいとの思いからだった。
「文句は受かってから言えよ」「負け犬の遠吠えだ」と言われれば、それまでだ。ただ、資金も人手も限られるなか、自力で政治を志すチャレンジャーが貧乏くじを引くような現状は、一刻も早く変えなくてはならない。「借り物」じゃない、オリジナリティーが評価される未来が、一日も早く実現することを願っている。
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