大連立を組んでも日本はよくならない--リチャード・カッツ

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 次に、大連立政権が相当長い期間続いたと考えてみよう。この場合、日本は一見そうとは見えない形で「一党支配の民主主義」に戻ることになる。政権交代を実現した09年の大きな前進を逆戻りさせることになってしまう。

さらには過去20年間の日本の沈滞を克服し、本格的な成長戦略を打ち出すために必要な改革にとって非常によくない前兆となる。現代の経済がビジネスに競争を必要とするのと同じぐらい、現代の民主主義は政治に競争を必要とする。一党支配の民主主義で大きな軌道修正をすることがどれほど困難であるかは日本が実証済みである。

結局、日本の政治的な不安定に対する簡単な解決や手早い解決はない。もしあったとしたら、そうした解決はすでになされていたはずだ。自民党も民主党もこれ以上存在する正当な理由を持たない。自民党は自らを改革する能力がない。小泉純一郎首相の時代は自民党の不可避な崩壊を先送りしたにすぎない。

一方、内部抗争が絶えない民主党の唯一の存在理由は自民党を壊すことにある。遅かれ早かれ、民主党も分裂することになるだろう。

日本には、真の改革を目指す党もしくは連立政権が最終的に登場するまで、さらに幾度かの政党の分裂や再編を乗り越える以外に選択肢は残されていない。

日本は、経済的繁栄なくして政治的安定を手に入れることはできないし、構造改革なくして繁栄を手に入れることはできないし、改革実行を公約する政党なくして構造改革を手に入れることはできない。「大連立」のような近道を試みることはただの幻想にすぎないのだ。

Richard Katz
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。
(週刊東洋経済2011年8月27日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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