大連立を組んでも日本はよくならない--リチャード・カッツ

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 驚くに当たらないことだが、この悲惨な状況を受けて、大連立を特効薬として支持する考えが一部の有権者に生まれている。

大震災の1カ月後、ある世論調査によれば、大連立に対する支持率は64%だった。最近の複数の世論調査では、大連立支持者の比率が3分の1強に低下しているが、それでも民主党と自民党それぞれに対する支持率である20%を上回っている。

各党の幹部が大連立政権を作れるほど、自身の権力欲を克服できるかはわからない。しかし、克服できたとしても事態は悪化するだけだ。

自民党も民主党も分裂へと向かう

一部の大連立論者がほのめかしているように大連立政権は1年しか続かないと考えてみよう。この場合、現在見られる権力闘争は今と異なった形で続く公算が大きい。

たとえば、民主党の一部には、どの政党も責任を取らなくていいように大連立政権が消費税を引き上げればよいとする意見がある。

だが、不人気な増税で両党が合意する可能性が高いとは思えない。自民党は、「まず民主党がマニフェストを放棄しなければならない」などと言って、増税の合意を避けようとするだろう。

個人的には、景気回復がいったん達成されれば増税を必要とするが、消費者支出が弱いことが大きな問題である日本の場合、消費税よりも引き上げが望ましい税があると思う。

たとえ大連立政権が成立しても自由貿易協定、エネルギー政策、社会保障改革など複雑で議論の対象となっている諸問題に取り組むことはほとんどできないはずだ。

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