「さらば堅実経営」パワー半導体ロームの乾坤一擲 2025年の世界シェア首位を目指して怒濤の投資
SiCはシリコンよりも高い電圧に耐えられ、省電力性にも優れるという特徴を持つ。一方でシリコンより高価なため、市場は限られていた。しかしテスラが自社EVに採用したことでEVへの搭載が加速。これから一段の成長が見込まれている。
現在は欧米のSiCパワー半導体メーカーが先行するが、ロームは「2025年度に世界シェア30%」のトップ企業になることを目標に掲げる。実現に向け、後発ながらも量産能力を確保するために躍起になっているのだ。
まずは2022年に、SiC向けの生産棟を福岡県の筑後工場に新設。当面の生産能力は足りるはずだったが、「建設を決めて以降、SiCパワーの市場規模予測がどんどん大きくなっていった」(ロームのIR担当者)。
そのため2023年末には、宮崎県国富町にある工場を追加で取得。40万平方メートルという巨大なこの工場はもともと、出光興産の子会社が太陽電池を生産していたものだ。さらに源流をたどると、日立プラズマディスプレイ(日立製作所と富士通、ソニーが出資)のプラズマテレビ向けのパネル工場だった。
福岡・筑後工場は技術開発のためのパイロットラインとし、国富町の宮崎第2工場を量産工場として位置づけた。これにより2030年度には、2021年度比で35倍ものSiCパワー半導体の生産能力を確保する見通しだ。
SiCへの投資が全社の収益を圧迫
だが直近の業績を見ると、こうした投資と収益のバランスが取れているとは言いがたい。
多額の投資を短期間に進めてきたために、SiCの量産投資が本格化する2024年度は、工場の減価償却費をはじめとした固定費が368億円増える見通し。2023年度の営業利益が433億円だった同社にとってはかなりの負担となる。
加えて、家電や産業機械向けの半導体市況も低迷。2024年度の営業利益は前期比7割弱減の140億円と大幅減益となる計画を立てている。過去10年で最低の利益水準に落ち込む見通しだ。
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