「クリスピー」大量閉店から復活果たした独自路線 ミスドとは違う突き抜けた個性を追求

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ドーナツが日本で身近となったのは、1971年にミスタードーナツとダンキンドーナツの1号店がオープンして以降で、「日本人はミスドでドーナツ体験を積んできた」ともいわれる。「アメリカではドーナツは朝食だが、日本ではおやつ需要」という声も聞く。

クリスピー・ドーナツ
渋谷シネタワー店(東京都渋谷区)の入口。視察時はバーバパパのキャラクターが並び、アメリカっぽさを醸し出していた(2024年5月下旬、筆者撮影)

そのミスタードーナツとの違いを訴求するクリスピー・ドーナツに対しては、こんな声もある。

「店舗数が少なく、出会えた時に特別感があります。でもミスタードーナツに比べて知名度が低いですよね」 (20代女性と40代女性)

ミスドとは違う価値観を提供する

ミスタードーナツは飲茶メニューを提供するなど軽食需要にも応えるが、国内に約1000店を持つ「生活インフラ的なドーナツ店」だ。クリスピー・ドーナツは違う戦略で進める。

「お客さまの『こうしてほしい』という声を追いかけるとマスブランドになりますが、現時点ではそのステージにいないので、商品やサービス、店の雰囲気も独自性で訴求します」

こう話す若月社長が社内に伝えるのが、「来店客に寄り添い『また来たい』と思われるような店づくり」だ。コロナ禍当初に始めた「サンキューカード」は今や名物になった。

クリスピー・ドーナツ
店舗の従業員が手書きする「サンキューカード」(撮影:風間仁一郎)

店舗拡大については、「販売チャネルも多様化しているので適度な規模感で行う」と話す。

今年度は10~15店増を予定。イベント的な使われ方が多かった「新宿サザンテラス店」でスタートしたブランドが、近年は日常使いにもシフトしてきた。個性的なドーナツが、どこまで消費生活に浸透するかが次の課題だろう。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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