「クリスピー」大量閉店から復活果たした独自路線 ミスドとは違う突き抜けた個性を追求

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一方、日本上陸当初に比べて変えたものもある。

「例えば商品に使うチョコレートは、アメリカの店舗で提供するものと比べると、日本の商品は糖度を控えめにしています」

総じて言えば、本国の成功体験をそのまま押し付けるやり方は支持されず、日本流にアレンジしてきた企業は成功する確率が高い。いわばローカライズで、当地の消費者と向き合う視点だ。

日本1号店は、物珍しさもあって行列店に

2006年の日本上陸時、連日行列ができるほど新宿サザンテラス店が人気を呼んだのは、新宿駅南口から歩いて行ける利便性に加えて、物珍しさもあった。来店客に“ドーナツシアター”と呼ぶ、大きな設備でドーナツを製造する工程を見せ、できたてドーナツの購入もできた。筆者も担当編集者に誘われて、同店を訪れたことがある。

クリスピー・ドーナツ
日本1号店として人気を呼んだ「新宿サザンテラス店」(写真提供:クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン)

だが、その人気はいつまでも続かず、2015年度には店舗を一気に閉店。新宿サザンテラス店も建物の賃貸契約満了を機に、2017年初めに店を閉めた。

クリスピー・ドーナツが一時期低迷したのは、時代と消費者の変化に対応しきれなかったからだ。手軽な価格で楽しめるスイーツ市場には、次々に新スイーツや店が登場する。一時は人気を呼ぶが、やがて飽きられる例も多い。

一方で同社が結果的に時代を先取りして、うまくいった取り組みもある。

「2016年にウーバーイーツが日本でサービスを開始した際、当社は最初の事業者のひとつでした。その経験で『これからは商品がお客さまのところに行く機会が増える』という思いを抱き、2019年には小売店に商品陳列棚を置く“キャビネット販売”をスタートさせました。これらが2020年からのコロナ禍でも業績を支えてくれたのです」(若月社長)

キャビネット販売は、定番の棚以外に什器で販売する棚を展開するもので、イギリスのクリスピー・ドーナツでも販売実績があったという。

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