「それでも日本株は上昇する」と言える2つの根拠 景気はよくないのに株価が高いのはおかしい?

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もう1つの注目点は「半導体」だ。昨今のAI関連の市場が急拡大していることで、決算シーズンには半導体大手の決算がマクロ指標に比肩するほど相場全体に大きな影響を与えることも珍しくない。今や半導体は「セクター」や「業種」といった用語が馴染まない存在となっている。

台湾の動向が暗示する日本株の明るい先行き

それゆえ、今後の相場を予想するうえでは、半導体各社の決算に対していかに先回りするかが重要になってくる。その点、5月20日に発表された台湾の4月輸出受注は朗報だった。2022年秋から2023年末頃までマイナス圏で推移していた前年比伸び率がプラス10.8%と、3月の1.2%から大幅にプラス幅が拡大したためだ。これは2022年3月以来の高い伸びとなった。

内訳を見ると、輸出の6割を占める電子製品と情報通信技術製品(ICT)が共に増加。特に前者の電子製品は同プラス22.7%と約2年ぶりの高い伸びとなった。後者の情報通信技術製品もプラス8.4%と、はっきりとしたプラス領域に回帰している。

統計発表元である台湾経済部は、今後のリスクとして米欧の高金利の影響、米中の貿易紛争、より広範な地政学的不確実性などを挙げているが、「AIの加速度的成長が半導体やサーバーのサプライチェーンへの需要を後押しする」(ロイター通信)と今後に手応えを感じているようだした。

また、この間の台湾の電子部品の出荷・在庫バランス(出荷と在庫の前年比差分)を見ると、需給が引き締まる方向にあることを示している。最新値である2月の値は出荷がプラス5.5%、在庫がプラス10.5%となり出荷・在庫バランスは明確なプラス圏にある。

世界半導体売上高を見る限り、スマホやPCに用いられる従来品の回復は依然道半ばだ。だが、上記でふれたように、半導体の生産集積地である台湾の動向をみる限り、先行きは明るい。こうした前向きな傾向が続き、広範な製品(用途)で半導体需要が回復すれば、日本の半導体企業(製造装置、部材)も恩恵を受け、株価上昇の牽引役になると期待される。

以上をまとめると、実質でみた日本経済は停滞が続いたとしても、価格転嫁の進展を受け、名目値でみた企業収益は拡大が続き、株価上昇を正当化すると見込まれる。また半導体関連銘柄を多く内包する日本株がAIブームの波に乗ることは比較的容易だ。日本株は年初に飛躍的上昇を遂げた後はレンジ相場に移行しているが、先行きは高値更新が期待される。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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