「それでも日本株は上昇する」と言える2つの根拠 景気はよくないのに株価が高いのはおかしい?
このGDPデフレーターの内訳を見ると、既往の輸入物価上昇と労働コスト増加を価格に転嫁する動きが相まって、国内需要デフレーターが同プラス2.6%と高い伸びを維持した。
一方、控除項目である輸入デフレーターは同プラス2.8%と3四半期ぶりに上昇に転じてGDPデフレーターの下押し(≒交易条件の悪化)要因となったものの、輸出デフレーターが同プラス7.8%と大きく伸びた。「付加価値の単価」とも言うべきGDPデフレーターの拡大は、名目値の企業収益が膨らむことを意味する。
ここで改めて、株価というものは名目値の概念であることを思い出す必要があるだろう。したがって、GDPデフレーターがプラスの状態にあるとき、企業収益は拡大傾向を強め、株価上昇が促される。そもそもGDPが付加価値、すなわち企業の粗利益の合計に近い概念であることを踏まえると、名目GDPが増加する局面で企業収益が拡大するのは当然だろう。
それゆえに企業収益の通信簿である株価と、名目GDPには長期的な連動性が確認できる。名目GDPが停滞した1990年後半から2010年代前半にかけて株価がレンジ相場を形成したことや、名目GDPが拡大基調にある中で日経平均株価が3万円そして4万円の大台を回復したことは、ある意味で自明と言える。
「今、投資家が株を買うのは正解」と言えるワケ
また、株価を考える上では金利を加味することも重要だ。そこで名目GDP成長率(直近値は前年比プラス3.4%)と長期金利(1%強)の差に注目すると、現在は大幅なプラス領域にある。
名目長期金利が「期待実質成長率(≒潜在成長率)+予想インフレ率」で決まるとするなら、長期金利は名目GDP成長率に近い数値となるはずだが、日銀の緩和的な金融政策によって長期金利が抑制されているため、コロナ期以降は「名目GDP成長率>金利」の構図が特に鮮明になっている。
この状態はマクロ的に見た場合、調達コスト以上の成長機会がいたる所に転がっていることを意味することから、もしその状態が長く続く、あるいはそう確信するなら、企業は借り入れを増やして投資を拡大し、同時に投資家は株式の購入を進めるのが最適解になる。逆に言えば、過剰投資がマクロレベルで発生した平成バブルをこうした文脈で説明することも可能だろう。
現在、日本株のPER(株価収益率)が安定していることに鑑みると、投資家が過度なリスク選好に傾斜しているとは思えない。つまり、現在の環境は投資家のリスクテイクが報われやすいと言えるだろう。これが1つ目の注目点の「名目GDP」である。
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