裸の少女をミキサーで「おぞましいアート」の背景 漫画やアニメの世界でも不健康な主張が台頭

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ケリーのキーアイテムはぬいぐるみです。愛おしそうにぬいぐるみを縫ったり、捨てられたぬいぐるみを大量に拾い集め、それでオブジェをつくったりしています。

性の属性を先入観で決めつけてはいけないとはいえ、むくつけき成人男性がぬいぐるみに執着するというのは(当時にあってはなおさら)やはり違和感を覚えさせます。ケリーは見る者に違和感を覚えさせることによって、ジェンダーや幼児性を意図的に混乱させているふしがあります。

裸の少女たちがミキサーに入れられた作品

日本でもおぞましいアートが立ち現れました。会田誠の《ジューサーミキサー》はショッキングな作品です。何百人何千人という裸の少女たちが巨大なミキサーに入れられており、下のほうはミキサーがすでに動いたためか血で染まっている、という絵です。会田はこのような挑発的な作品を次々に発表し、ときに物議を醸しました。

加藤泉が描くのは、胎児のような奇妙な生物です。頭が大きく、ギョロリと真ん丸な眼がついている一方、身体はひどく弱々しい。グロく不気味で、どこか性的なニュアンスも漂っています。加藤は執拗なほどにこのテーマを追い続けています。

おぞましいアートは、建前はどうあれ本音レベルでは、人間の心理には不合理なもの、汚いもの、残酷なもの、残虐なものといった"闇"を忌避しつつも、同時に希求するところがあるという矛盾が存在しており、理性では認めたくないような本性が切り離しようもなくそなわっていることをあからさまにしました。

こうした〝不健康な主張〟は現代アートに限ることではありませんでした。テレビでもかつての「元気で、明るく」という模範的なヒーロー像とは無縁のキャラクターやストーリーが現れるようになりました。

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