年金生活者たちの「実は優雅な暮らし」の実態 「家計調査」から見えてくる意外な懐事情

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ただ、ちょっとしたノウハウが必要だ。家計調査自体はよく使われる一般的な統計なのだが、年金生活者の実態を知りたいとなると、それを示している表がどこにあるかを見つけ出すのは容易でないからだ。

公表されている家計調査の統計表には、さまざまな観点から分類されたきわめて多数のものがあり、しかも、それらがあまりうまく整理されていない形で提示されているので、初めて見る人は、混乱状態に陥るだろう。

年金生活者の最新のデータは、次のところにある。「2023年、家計調査、所得支出編。第3-12表、(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別、二人以上の世帯」を検索語として検索し、「第3-12表」を開く。

ここには、多数の項目が示されているのだが、そのうち「65歳以上の者がいる世帯(世帯主が65歳以上、無職世帯)」を見る。これが、ほぼ年金生活者の概念に一致すると考えてよいだろう。

この区分の属性は、次のようになっている。世帯人員が2.34人。世帯主の配偶者のうち女の有業率が11.1%。世帯主の年齢は76.4歳、持家率は94.1%。広さは40.3畳だ。

平均年金額は、モデル年金の約9割

まず公的年金額を見ると、月額20万1929円となっている。年間では約240万円だ。

この額は、2023年の厚生年金の「モデル年金」22万4482円より1割ほど少ない。「モデル年金」とは、厚生労働省が年金額の水準を決めるために使っている概念であり、標準的な世帯(平均的な賃金で40年間就業した夫と専業主婦の妻の世帯)の年金だ。

家計調査に表れる公的年金支給額がその年の厚生年金モデル年金より低い理由として、2つのことが考えられる。第1は、国民年金の受給者も入っていること(2023年の国民年金の モデル年金は、6万6250円)。第2の理由は、賃金が上昇した場合、既裁定者の年金は、物価上昇分はスライドして増えるが、実質賃金上昇分は増えないことだ。

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