風力発電の本格普及への高いハードル、補助金廃止で強まる“逆風”

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 本格普及に向けもう一つ見逃せない問題は、電力会社の送電網との接続や系統連系対策である。

ユーラスエナジーの永田社長は、風力の優先給電、優先接続を電力会社に要望する。「風力をベースロードに使い、電力が余って発電量を落とす場合には、風力を最後まで残していただきたい。新規に送電網につなぐ場合も、優先的に実施してほしい」。ドイツやスペイン、デンマークなどでは、再生エネの優先給電・接続ルールが法制化されている。

また、全量買い取りが始まれば、風の強い北海道や東北では、風力発電による売電が増えると予想される。その際、電力会社管内の送電網に加え、会社間連系線の増強も課題になる。北海道や東北の風力発電所で発電した電気を需要の多い首都圏に送るには、北海道と本州を結ぶ北本連系線や、東北と関東を結ぶ連系線の増強が必要だ。

風力発電は、再生エネの中で技術的に最も先行している。太陽光と比べ、設備容量当たりの設置コストはほぼ半分で、設備利用率は20%前後と約2倍。国民負担を抑えながら温暖化ガス削減を進めるには、本来、切り札となるはずだ。本格的な普及のためには、全量買い取り制度にとどまらず、長期目標策定など国を挙げた取り組みが欠かせない。

(週刊東洋経済2011年7月30日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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