「女子高生に扮したおじさんの恋」にグッときた夜 NHK「VRおじさんの初恋」が名ドラマである理由

拡大
縮小
VRおじさん
主人公で現実世界の直樹を演じる野間口徹(画像:NHK『VRおじさんの初恋』公式サイトより)

「はじまりがあれば終わりは必ずくる」は、NHKの夜ドラ『VRおじさんの初恋』(NHK総合毎週月曜~木曜22時45分~23時)のセリフである。

「夜ドラ」は名作が続々生まれている注目の枠で、『VRおじさん〜』もひそやかな夜の楽しみにうってつけ。今週最終回を迎えるにあたり、おそらく寂しさとともにどんなふうに終わるかワクワクしている視聴者も多いことだろう。

※以下、物語のネタバレを含みます。

女子高生に扮したおじさんが恋をした

同作は長らく生きてきて成功体験と言えるものがない、40代のおじさん・直樹(野間口徹)がVR――Virtual Reality(「仮想現実」)の世界にハマって、そこで出会った人に恋をする物語だ。

原作は暴力とも子の描いた漫画で、すでに完結しているから、最終回はわかっているといえばわかっている。だが、とかくドラマは原作とは違うところがあるものなので、予断を許さない。終わりよければすべてよし。なにごとも最終回が肝要だ。ここでは最終回を前に、この名作の魅力を振り返ってみよう。

『VRおじさんの初恋』の肝は、“現実の世界”と“バーチャルの世界”をどうとらえるかにかかっていると思う。直樹は現実の世界では、いわゆる“イケおじ”(イケてるおじさん)ではなく、むしろ冴えないおじさんである。会社では目覚ましい活躍など皆無なうえ、遅刻しがちで上司に目をつけられ、希望退職者候補になっている。女性とつき合ったこともない。

次ページ宮沢賢治『銀河鉄道の夜』のような叙情性
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT