LINEヤフーへの行政指導が悪手である3つの理由 再発防止に資本関係の見直しが必要なのか

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2024年3月、そして翌4月にも行政指導を行った総務省は、2度にわたりこういう文言を文面に盛り込んだ。

(図・共同)

「委託先から資本的な支配を相当程度受ける関係の見直しを含め、委託先への適切な管理・監督を機能させるための経営体制の見直し」

ここでいう「委託先」とはネイバーの子会社を指す。ややわかりにくいが、LINEヤフーがITインフラ運用を業務委託しているネイバー子会社のセキュリティ対策に脆弱性があったのが問題の発端だ。

本来なら業務の委託元であるLINEヤフーが委託先であるネイバー側に「対策をもっと強化するように」と指導できる立場である。

しかし、総務省からみると、「ネイバーは委託先だが大株主でもあるので、LINEヤフーはネイバーに強く出ることができない、あるいは忖度するかも。だから資本関係見直しが必要でしょう」というロジックだ。

委託元が委託先に忖度?

筋が通っているようにも思えるが、これは①ネイバーがセキュリティ対策強化に消極的で、②LINEヤフーからネイバーへの忖度が存在する、という2点が確認されて初めて成り立つ。総務省はこの2点に関してどこまで確信があるのであろうか。

また、ネイバーの「資本的な支配」が弱まることが、セキュリティ強化に直結するのであろうか。

韓国・大邱大学経済金融学部の金良姫(キム・ヤンヒ)教授は、韓国『ハンギョレ』紙とのインタビューで「LINEヤフーは技術やコンテンツの面でネイバーに依存せざるをえず、そもそもソフトバンクもそのためにネイバーと経営統合した。短期間で関係を断ち切れというのは無理がある」と述べ、資本関係の見直しはセキュリティ強化につながらないと見る。

韓国経済や通商問題に詳しい、亜細亜大学アジア研究所の奥田聡教授も、「短期間に2度も行政指導をしたこと自体、違和感を覚える」としたうえで、こう指摘する。

「指導は再発防止策に絞るべきで、資本構造にまで踏み込んだのは勇み足。総務省としてはLINEをNTTやドコモのような基幹インフラと同列にみなして外国資本の影響力を削ごうとしているのだろうが、LINEはSNSの一つに過ぎず、韓国企業が関与しているのは当初からわかっていた。そうした背景が嫌なら、中国のようにすべて自国でサービスを開発するしかない」

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