投資の視点で「良い会社」を判断するポイント 「売上」や「財務状況」だけでは実態はわからない

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さて、以上から、「収益性」と「資本構成(財務レバレッジ)」が最も一般的なクオリティ投資の指標であると考えられるが、ここでは、「収益性」にフォーカスを当てることとする。

なぜならば、「収益性」はビジネスの本質に起因する要素が大きい一方、「資本構成(財務レバレッジ)」はマネジメントの意思決定に依存する要素が大きいためだ。

負債を嫌う企業は「良い会社」と言えるのか

たとえば、日本企業は負債を抱えるのを嫌い、現金を保有することを好む傾向にあると言われている。

『米国の投資家が評価する「良い会社」の条件 クオリティ投資の思考法』(日本実業出版社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

その場合、負債のない日本企業は、負債を利用して急速に成長する欧米企業に比べて質の高い会社だ、ということになるが、当然、そのようなことはない。

ただたんにリスクをとることを恐れて現金を溜め込む場合、将来の成長のための投資を怠ることとなり、会社の存続に影響を及ぼすかもしれない。

「資本構成(財務レバレッジ)」は財務的な安定性を測る重要な特性であるものの、会社のマネジメントの意思決定によって左右されるため、「良い会社」か否かを判断するうえでは「収益性」のほうが本質的な特性であると考えられる。

したがって、ここではクオリティ投資の視点から考える「良い会社」とは、「収益性の高い会社」であり、より具体的に表すと「高いリターンを長期的に生み出すことができる会社」であると定義する。

先ほど説明したROEの概念を含めて言い換えるのであれば、「高いROEから得た利益を、同水準以上のROEを得られるビジネスに、継続的に投資できる会社」がクオリティ投資における投資対象だ。

 
森 憲治 公認会計士、米国証券アナリスト

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もり けんじ / Kenji Mori

公認会計士、米国証券アナリスト(CFA)、シカゴ大MBA
(Chicago Booth School of Business)。2007年にPwCあらた監査法人(現・PwC Japan有限責任監査法人)に入社(2013~2015年の2年間は米国PwCボストンオフィス出向)。ファンド業界のクライアントに対し会計監査、コンサルティング業務を提供。シニアマネージャーとして2019年まで勤務。シカゴ大MBAを経て、シカゴに拠点を設ける投資ファンド(Anthropocene Capital Management, LLC)にシニア投資アナリストとして2023 年まで勤務。Anthropocene Capital Management, LLCはクオリティ投資戦略を採用し、欧州・アジアの中小型株に対し長期的に投資を行なっている。

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