早出勤務で「労災」、本当に認められにくいか それは長時間労働か、ライフスタイルか…

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「定時の始業前の早出残業でも、定時の終業時間後に行われる残業でも、業務の必要性があり実際に働いていたのであれば、それは労災(労災にまつわる損害賠償)における過重性を判断するための『時間外労働』とみなされます。私が知るかぎり、これまでの行政の先例や裁判例の判断の多くは、この立場によっていると思います」

波多野弁護士はこのように説明する。

大阪高裁判決も「時間帯」による区別ではない

「過労死に関する判例で有名な『電通事件』最高裁判決(2000年3月)は、『労働者が労働日に、長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである』と述べています。

この最高裁の判断においては、働いた『時間帯』によって時間外労働となるかならないか、といった区別はまったくしていません。今回話題になっている大阪高裁判決も、早出出勤だからという理由で時間外労働を認めなかったわけではないことに注意する必要があります」

どういうことだろうか。

「大阪高裁判決の判断は、業務の必要性から早出出勤をしていたわけではないという前提に立っています。

早出出勤途中に食堂で朝食をすませたり、コンビニで朝食を買って職場で朝食をとったほか、仕事柄、一般紙の朝刊だけでなく、経済新聞の朝刊に目を通していた。早出をしていたのは、被災労働者が単身生活だったことから、社宅にいても職場に出ても特に生活上異なるところはないためだったと判断したのです。

この前提となる判断が正しいかどうかは別の議論ですが、この男性の早朝出勤は、業務上の必要性がなかったとして、時間外労働に含まれないと判断したのです」

大阪高裁判決は、「時間外労働」の時間帯が早出というだけで「時間外労働」に該当しないという判断を行ったというわけではないということだろうか。

「そうです。この大阪高裁判決は先ほどのような事実関係を基に、このケースでの早出残業を時間外労働として認めなかったに過ぎず、早出残業を一般的に時間外労働として認めないという判断がされたわけではありません。あくまで、大阪高裁の今回の事実認定を基にした判決であり、早出残業に関する先例的価値はないと思われます」

波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
事務所名:同心法律事務所
 
 
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