木造は石造より命が長い?プロが語る建築の本質 東洋の「木の文化」と西洋の「石の文化」の違い
たとえば火を燃やして食べ物を調理する囲炉裏のようなものがあれば、そこが「中心」です。それを家族みんなで囲み、寝起きを共にする。あるいは、洞窟の奥には一族の長老が座る場所が用意されていたかもしれません。
これも、ある意味で「中心」でしょう。このように何らかの「中心」が生じることで、洞窟は家族の一体感やヒエラルキーといった秩序を表現する空間になったわけです。
また、洞窟はセキュリティの面でも有効な空間でした。外敵が侵入する開口部は一方向にしかないので、同時に四方八方を見ることのできない人間にとっては、たいへん安全性の高い構造です。誰かが開口部のほうだけ警戒していれば、ほかの家族は安心して眠ることができたでしょう。
エジプトのピラミッドは「建築」とは呼べない?
建築にとって、「空間」はとても重要な要素です。人間が使うための空間をどのように構成し、そこにどのような意味を持たせるか──建築家は、それを考えます。建物をつくるとは、空間をつくることにほかなりません。
ですから、たとえ人工物ではない天然の洞窟であっても、人間にとって意味のある空間が生まれれば、それはある意味で建築に近いものと考えることができるのです。
逆に言うと、人間の手で建造したものであっても、人間が過ごす空間のないモニュメントのようなものは、少なくとも僕は「建築」とは呼びません。具体例としては、エジプトのピラミッドがそうです。
もちろん一般的な意味ではそれも「建築」に属するでしょうし、実際、建築史の1ページ目でピラミッドを取り上げる本も少なくありません。構造家などエンジニア系の専門家たちには、興味深い構造物ですが、でも僕だけでなく、ピラミッドに建築としての面白さを感じない建築家は多いと思います。
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