「ソニー・ホンダ」異なる文化から生まれたもの デザインの視点から見る異色コラボの結節点

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また、車体をぐるりと取り巻くように、ソニーが開発・製造しているセンサーが搭載されているのが「アフィーラ」の特徴の1つ。これによって、乗った人はエンターテインメントにかぎらず、さまざまな体験をすることができる。

車だけでなく、展示空間にもこだわった

デザイン&ブランド戦略部がかかわったのは、車そのもののデザインだけではない。展示空間についても徹底してこだわった。

メーカーによっては、製品そのもののデザインと、展示空間のデザインの担当を分けているところもある。だが、ソニー・ホンダでは、デザイン&ブランド戦略部がすべてにかかわり、照明や映像について細部まで検証し、アフィーラの独自性を最大限にアピールするよう、試行錯誤して作り上げた。「ブランディングとして、最終的にはユーザーにつなぐところまで、デザインを貫くことができたのは幸いでした」(石井さん)。

展示にもとことんこだわった(写真:ソニー・ホンダ提供)

今のところの反応では「ソニーとホンダという異なる分野の企業が一体となって、何を見せてくれるのだろうと期待する声が多かったことに勇気づけられました」(河野さん)。「これだけの反応を得て、さらにそれを上回ることをやっていこうと、気を引き締めているところです」(石井さん)。

2025年に発売を開始し、2026年にアメリカで発売するにあたり、プロジェクトは猛スピードで進んでいる。ただ、そこだけがゴールではない。「今の状況にはまだ満足していません。先進性があって強烈なメッセージのあるものを、どうやって世の中に送り出していくかに、日々、力を尽くしています」(石井さん)。

ソニーとホンダが組んで、新しいモビリティを世に送り出したことについて、数々の展示会で好反応を得たことは大きな成果だろう。一方、移動手段としての車を取り巻く環境は、過去に例を見ないほどの大きな転換点を迎えている。その渦中にあって、業界内外の期待を上回るものを生み出せるのか。そして、業績として確かなものを残すことができるのか――。

「あの頃はよかった」という文脈は好きではないが、かつてのウォークマンやプレイステーションがそうだったように、人々のライフスタイルを一変させてくれるようなものを生み出せるのだろうか。これからが正念場だ。

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川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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