行動経済学には「あぶく銭効果」(ハウスマネー効果)という言葉がある。「悪銭身に付かず」と言われるように、思いがけずに得た「あぶく銭」は貯蓄されずに消費されやすい。
「あぶく銭効果」は無駄遣いをしてしまうという意味で良くない例として扱われることが多いが、経済効果という意味では、貯蓄されずに消費された方が短期的には望ましい。
このように考えると、「貯蓄から投資へ」の次の「投資から消費へ」のフェーズはなかなか訪れないかもしれない。
個人消費の増加によって経済効果が現れるのは、家計のポートフォリオの収益性が高まることによって将来不安がなくなり、投資熱の背景にあった将来不安が解消されるタイミングとなる……とすれば、かなり先のことになりそうである。
老後のための「消極的」投資
ここで、筆者らが2023年10月に実施した「個人の資産運用に関する意識等についてのアンケート2023(*注2)」と題したインターネットアンケート調査の結果を紹介したい。
当該調査では1030人の回答者に対して「金融資産や不動産の保有目的」を調査したが、最も多かったのが「老後の生活資金のため」だった。
次点が「すぐに使わない資金を預けておくため」である。「耐久消費財の購入資金に充てるため」などの消費に直結する目的はかなり少数派であることがわかる。
また、それぞれの投資目的ごとに株式投資の積極度(「積極的にやりたい」から「全くやりたくない」の5段階調査)に対する回答を集計すると、「老後の生活資金のため」などは積極度が低いことがわかった。前述したように、消極的に投資をしている層がそれなりにいるのだろうと、想像できる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら