米国の政府債務格付けAaaを据え置き、見通しはネガティブ《ムーディーズの業界分析》


ソブリン・リスク・グループ
VPシニア・クレジット・オフィサー
スティーブン・ ヘス

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、8月2日の米国での法定債務上限引き上げ合意を受け、米国の政府債務格付けAaaを据え置いた。格付けの見通しはネガティブである。

ムーディーズは7月13日、米国の政府債務格付けを引き下げ方向で見直しの対象とした。これは、法定債務上限が引き上げられない場合、可能性は低いが、デフォルト(債務不履行)に陥るリスクが高まるとの見方によるものであった。債務上限をまず9000億ドル引き上げ、年末までにさらに1.2兆~1.5兆ドル引き上げることにより、そのようなデフォルトのリスクが実質的に排除されたため、Aaaの格付けを据え置くこととした。

Aaaの格付け据え置きに当たり、ムーディーズは、8月2日の合意が、米国政府の債務指標を長期的にAaa水準に維持するために必要な、長期的財政再建に向けての第一歩であると認識している。債務上限引き上げ法案では、向こう10年間で9170億ドルの特定の歳出削減と、同期間にさらに1.5兆ドルの赤字削減に向けての提言を行う特別委員会の設置を求めている。特別委員会で合意に達しなかった場合には、自動的に1.2兆ドルの歳出削減策が実施されることになる。

一方、格付け見通しをネガティブとしたが、これは、(1)今後、財政規律が緩んだ場合、(2)2013年にさらなる財政再建策がとられなかった場合、(3)景気見通しが大幅に悪化した場合、または(4)現在の予想を超えて米国政府の資金調達コストが明らかに上昇した場合に、格下げのリスクがあることを示唆している。

第一に、特別委員会のプロセスと自動的トリガーにより、財政規律を促進するメカニズムが設けられたが、この枠組みはまだ実証されたものではない。過去の財政ルールに関する取り組みは、つねに時間を経て検証されたものとは限らない。したがって、予算管理法に基づいて実行される新たなメカニズムが有効でないことが明らかとなった場合、格付けにマイナスの影響が及ぶ可能性がある。ムーディーズのベースラインシナリオでは、総選挙前にしばしば見られる財政拡大への圧力や、いわゆる「ブッシュ減税」が12年末に期限切れを迎えることから交渉難航が予想されるものの、財政規律は維持されると想定している。

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