そこで国はバターの需給を見ながら、必要に応じてバターを輸入している。今年は1、5、9月時点の状況を見て、どの程度の量を輸入するか決めることにした。そして5月に前2014年度の生産や在庫状況を踏まえたうえで、1万トンの追加輸入を決定。輸入分は業務用に回し、国産生乳から製造された物は家庭用、すなわちスーパーなどの店頭に並ぶことになりそうだ。
だが、国は乳製品価格の低下を恐れ、最小限の量しか輸入しない。そのため、大口需要者向けの1キログラム当たり価格は、2010年時の1054円から、直近の今年4月には同1375円まで上昇している。5月の追加輸入決定も「焼け石に水」となりそうだ。
陳列棚は空いたまま
品薄により、スーパーなどのバターの陳列スペースは、ぽっかり空いているところが少なくない。200グラムの商品が400円台後半で売られているケースが多く、2014年に比べ100円前後上昇している。1人1個など購入を制限する店もある。
近畿の大型小売りチェーン店では、「本社が一括受注して、各店舗に配分している。納入も週1回のみで、陳列スペースの空いた状態が続いている」という。
メーカー側も、「需要に応じて商品を生産し、店頭に並べたいのはやまやまだが、原材料不足で難しい」(雪印メグミルク)というのが業界全体の共通の悩み。国策により輸入が抑えられ、原料の生乳が十分に確保できなければ、それに応じて生産量を決めるほかない。
国が酪農家の保護を重視するあまり、消費者にシワ寄せが来ている。
(「週刊東洋経済」2015年7月4日号<6月29日発売>「価格を読む」を転載)
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