TOKAI、東電と組み首都圏へ本格進出 鴇田社長「さまざまなセット割引商品を作る」

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――東電の立場からすると、東電管内を守るとともに、管外も攻めたいはず。中部電力の管内である富士川以西の静岡県内など、東電管外での協力はどうするか。

それも東電がやりたいと言えば考える。ただ、2つの条件がある。1つは(東電が供給する電力の)価格。中部電力も最近はかなり安いので、東電がそれに対抗できる価格を出す必要がある。柏崎刈羽原発が動けば下げ余地がかなり生まれるのではないか。

もう1つの条件は、(富士川を境界として)電源周波数の異なる東西間の融通が120万キロワットに限られている中、(富士川以西で使う)60ヘルツの電気を東電がどこまで用意できるか。彼らは十分に用意できると言っている。そうであれば、富士川以西の当社の顧客80万件を、東電の電力でコーティングすることで守ることができる。

――上流(燃料調達・発電)で提携した東電と中部電が下流(小売り)でどこまで競争すると見るか。

私は昔の大手電力の幹部を知っているが、彼らを見ている限りでは、相手をノックアウトするような激しい争いはしそうもない。ジャブの打ち合いだろう。ただ、激しい打ち合いをする可能性もある。それに備えて当社の顧客254万件を守らなければならないので、水面下で対策を考えてきた。

――東電は福島事故を起こし、実質国有化された会社。被災地の東北電力管内はもちろん、他の電力管内を攻めにくいようにも思える。

東北を攻めることはしないだろう。打ち合いをするとすれば、大手の中部電力、関西電力との間ではないか。当社としては、打ち合いが始まっても、電力をちゃんと手に入れられるようにし、生き残れるようにしたい。

M&Aは積極的にやっていく

――2017年4月からは都市ガスの小売りが全面自由化されるが、これに向けての対応は。

当社グループ内には、東海ガスという顧客数約5万件の小さな都市ガス会社がある。ただ、より商機が広がると考えているのは、都市ガス小売り自由化と同時に実施される簡易ガス事業(70戸以上の団地にLPガスを導管で供給する事業)の自由化、料金規制撤廃だ。都市ガスの供給区域だった団地やマンションに、われわれLPガス業者も参入できるようになる。都市ガスの導管整備に比べ、簡易ガスはバルクを置いて簡易な導管で流すだけなのでコストが安い。震災にも強いので、今後はそういう住宅が増えてくるとみている。LPガス価格もシェールガスのおかげでどんどん安くなっており、都市ガスより有利に納入できるはずだ。

――企業買収(M&A)に対する考えは。

LPガスなど、スケールメリットが効いてくる事業では当然ある。今後は自由化で企業間の優劣がはっきりついてくる。今でも廃業する業者は多いが、これからは加速度的に増えるだろう。中小のプロパンガス屋を直営にすることもあるが、大手もだんだんやっていけなくなるだろう。今回、資金調達した100億円(2020 年満期円貨建転換社債型新株予約権付社債)の一部はそのために使うことになる。借金は近年、半分以下に減らしたので、必要があれば新たに数百億円借りることだってできる。M&Aは積極的にやっていくつもりだ。

――本格的に都市部、首都圏に攻め込むことで、5年後にはかなりイメージが変わっているかもしれない。

東京で当社を知らない方が少しずつ減ってくるだろう。社名も変えなければならないかもしれない。「トーカイ」という社名は何十、何百社とあるのではないか。もっとわかりやすい名前がいいと思うが、まだ誰にも相談はしていない(笑)。

――社長はまだまだ辞めるわけにはいかない?

なかなか客観情勢がね。自由化とかなければ別だが・・・。ただ、この1年間の水かきで、自由化対策はかなり進んではきた。いちばん怖いのは、どこの電力会社とも組めないで、敵がらんらんと狙っている状況だが、大手と組める体制になり、地合は作れた。これから実施・導入することで早期に仕上げたいと考えている。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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