TOKAI、東電と組み首都圏へ本格進出 鴇田社長「さまざまなセット割引商品を作る」

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――東電とすれば、小売りから卸売りに替わるだけで、販売量自体は変わらない。

管内ではそうなる。他社に獲られずに済む。放っておくと虫食いに遭うが、当社と組んでガスや通信などとのパッケージ商品に電力を組み入れることで、それを防げる。虫除けの「パラゾール」みたいなものだろう(笑)。当社としても、電力とのパッケージ商品によってガスや通信などの既存の顧客基盤を守れる。お互いにそうしたメリットがある。

――商材が多様な分、さまざまなセット割引商品が作れそうだが。

専業の通信会社やガス会社と組む場合とはそこが違う。当社と組めば、いろいろな商品があるので、顧客によって組み合わせ方も多様にできる。より多くの商品をまとめて契約された顧客の割引率を高めるのは当たり前。取引関係がより強固になるのだから、それだけの対価を払う価値がある。

――すでに自由化されている高圧の分野では、大手電力より料金を数%程度割り引く新電力もあるが、家庭向けなど低圧の分野ではどれぐらいの割引率を提示できそうか。

ときた・かつひこ●1945年、埼玉県生まれ。68年、東京大法学部卒業、通商産業省(現在の経済産業省)入省。外務省ナイジェリア大使館、日本貿易振興会ロンドンセンターなどを経て93年に京都府副知事、96年に防衛庁(現在の防衛省)装備局長。98年の中小企業庁長官を最後に退官。2002年にTOKAI顧問就任。05年、TOKAI社長。11年のTOKAIホールディングス設立に伴い、現職。

東電さん次第だ。虫食いに遭った時に想定される損害額の何割かを出そうと思っているのではないか。まだ託送料金(新電力が大手電力の送電線網を利用する際に負担する料金)が決まっていないので判断しづらいと思うが、託送料金が今夏中に決まれば、具体的な収支計算が可能になる。その後に割引率も決まっていくだろう。(電気使用量の多寡など)顧客のパターンに応じて、何種類かを用意することになるのではないか。

仮に1割割り引けば、かなり切り替えが起こるのは確実だろう。当社はいろいろな商材との組み合わせが可能な分、(価格戦略上も)有利なポジションにあると思っている。

――割引原資は当然、TOKAI側も出す?

それはプラスアルファで出さないと価格の優位性が出てこない。当社にとり、電力を商材に加えることは既存顧客の囲い込みとともに、新規顧客の獲得にも役立つ。当社は現状、年間の新規顧客件数(今期目標)が31万件の一方、解約が24万件で、約7万件の純増。電力とのセット販売で解約が半減するだけでも、大幅な純増となる。それが割引原資となり、新たな顧客獲得につなげられる。

新規顧客獲得で「電力は大変な武器に」

――東電の顧客基盤(家庭向けだけで約2000万件)が膨大な分、TOKAIにとっては攻める余地が大きい。

そうだ。関東のLPガスだけで700万件の利用者があるが、当社の顧客はそのうちの50万件しかない。それだけ当社にとっての未開拓地は大きい。電力を手に入れて、守るだけでなく攻めるほうに使えれば、大変な武器になる。電気は家庭の100%が契約しているだけに、商材としてものすごいパワーを持っている。

――現在の顧客件数が254万件。自由化後の拡大目標は。

おそらく相当増やせるだろう。提携効果はまだ中期計画にも入れていないが、少なくとも年間の純増ペースを10万件以上にはしたい。

――営業手法はどう工夫していくか。

賢い消費者にどうやって売るか。今までのようなドブ板商法だけで契約を取れる時代ではない。ただ安いからではなく、もう少しスマートに、知恵を使って説得にいかないとダメだと思っている。たとえばO to O(Online to Offline)。ウエブで顧客を引き付け、アウトバウンド(見込み顧客への営業)で電話をし、それからコンサルタンシー(専門的助言)を行う形で売りに行く。当社は商材がたくさんあるので、顧客がガスに関心がなければ、水やCATVなども提案できる。今は約800人の営業マンがそれぞれ商材のテリトリーを持って営業しているが、アイパッド(iPad)に情報を送り込むことで、各自がいろいろな商材を売れるようになる。今後はそういう方向へ持っていくことを考えている。

――欧米の電力・ガス業界では、住宅リフォームとのセット販売も多い。

住宅リフォーム事業は当社も強化している。同事業を通じて顧客の家庭内の事情が自然とわかり、奥様方から直接ニーズを聞くことで、当社のさまざまな商材を提案できる。

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