なぜ「江ノ電」にアジアの若者が殺到するのか 乗客1700万人!「江ノ電」の強さの秘密②
江ノ電では、日本語、英語に加え、中国語、韓国語と、4カ国語に対応した観光案内のタッチパネルをいち早く導入しました。増加が見込まれるアジアからのお客様に、母国語で情報を提供するためです。海外からのお客様にも便利なように、Wi-Fi環境の整備なども積極的に進めております。
――海外の鉄道とも積極的に提携されているようですね。
2013年4月に、台湾鉄路管理局と観光連携協定を結びました。それに基づいて、台湾の平渓(へいけい)線と江ノ電の1日乗車券とを相互利用できるサービスを始めました。平渓線は台湾の観光地を走るローカル鉄道なのですが、一方の鉄道を利用したお客様には、チケット交換により他方の鉄道を無料でご利用いただけるというものです。
開始から約2年の今年5月には1万人目の台湾からのお客様をお迎えすることができ、現在でも1カ月に300人から400人のご利用があります。
日本に限らず海外からのお客様も含めて、地元である鎌倉や藤沢の魅力を伝える玄関口として、これからも江ノ電は積極的な役割を果たしていくつもりです。
――海外からの乗客は、どこの国の方が多いのですか?
乗客数の多い順でいうと、中国、台湾、韓国となります。最近では、そのほかのアジアの国々、特に東南アジアの方々も増加率としては大きいものがあります。欧米系の方は横ばいという感じです。
今後は、中台韓以外のアジア、東南アジアのほうへも市や観光協会と出向いて行って集客の努力をするつもりです。グルメや工芸品、歴史遺産なども含めて情報発信してこようと思っています。
われわれ世代には意外なのですが、コミック『SLAM DUNK(スラムダンク)』の舞台になった影響で、鎌倉高校前駅近くの踏切には、中国、香港、台湾、マレーシアなどアジア各国から若い世代のファンが大勢撮影に訪れます。記念撮影したりするのはもちろんですが、ウエディングドレスを着て記念写真を撮りに来ているカップルが多いのにも驚かされます。
その辺が、われわれが見落としているというか、足元に観光資源があると気づかされる、もっともっと伝えるべき観光資源の大きなポイントだと思います。
運輸事業は「サービス業」であるという信念
――以上のほか、経営上、どのようなことに留意されてこられたのでしょうか?
鉄道事業に限らず、運輸事業は「サービス業」であって、特に観光路線はお客様に選ばれなければ経営は成り立ちません。江ノ電も、少しばかりイメージがよく、人気があるからとうぬぼれていては、周辺の状況が変わったときに対応できません。
とりわけローカル鉄道の職員は、つねにお客様の立場に立ち、リピーターになっていただくにはどうすればいいのか、地元の活性化に役立つにはどうすればいいのかと、考え続けるべきなのです。
そして、具体的に自らを変えなければなりません。ただ、やみくもにやり方を変えるわけにはいきません。江ノ電とお客様との接点のところでうまくいっている部分は、大きく変えるべきではないのです。たとえば、先ほども申しましたように、車両や駅舎などの古さはお客様に喜んでいただいているのですから、変えてはいけない。けれど、古いものの中に、お客様の不便や不快につながるものがあれば、すぐにでも変える必要があります。
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