なぜ「江ノ電」にアジアの若者が殺到するのか 乗客1700万人!「江ノ電」の強さの秘密②

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――具体的にはどのようなことをされたのですか。

たとえば、鎌倉高校前駅の建物は昔のままです。けれど、少し前までトイレが不潔で、お客様に不愉快な思いをさせていたのです。当然のことですが、壊れた箇所を直し、清潔さをつねに保つように変えました。

また、駅の掲示板もまったく整理されておらず、お客様にとって見にくいため、役に立つ情報がわかりにくくなっていました。行政からの連絡や営業広告、イベント情報などが乱雑に張り出されていたのです。これでは誰も見てくれません。掲示内容ごとに一目でわかるように整理すれば、行政連絡は地元のお客様に役立ちますし、イベント情報や近隣のお店の広告などは観光のお客様に役立ちます。私が江ノ電の経営を任されてからは、お客様視点の徹底に心掛け努力してきました。

そのかいあり、今では、職員による観光案内の壁新聞が張り出されるようになりました。

駅を「メディア」と考える

職員による観光案内新聞

――駅そのものも観光情報を発信するメディアとなっているわけですね。

藤沢、鎌倉、江ノ島の駅では、沿線の花の名所で見頃の花をご案内するため、本物の花の鉢植えを飾ることで、お客様の目に直接、訴えかけるようにしています。

駅のホームの花を見て、「おや、どうしてバラが置いてあるんだろう」と観光のお客様は思います。傍らの案内を読んで、「ああ、今は江の島の植物園でバラが見頃なんだ」とわかっていただくわけです。

逆に、たとえば有名な鎌倉の成就院(じょうじゅいん)の紫陽花をご覧になったお客様が、その帰りに藤沢の駅で紫陽花の鉢植えを見つけ、それをバックに記念写真を撮影する。すると、その日の思い出が残り、また藤沢や鎌倉へ遊びに来ようかと思っていただけるわけです。

駅のみならず車内でも、観光のお客様に楽しんでいただくために、昔のバスガイドさんのように、電車の中からその日の景色をご紹介したり、ビューポイントを案内したりすることも始めています。トイレにしても掲示板にしても、また車内の観光案内や駅のディスプレーにしても、些細なことですが、お客様にとってみれば、意外に印象を左右します。

喜んでいただけるものは変えない。もっと喜んでいただけるように変えられるものは変えていく。これを徹底してきたつもりです。

(写真撮影:今井 康一)

深谷 研二 江ノ島電鉄株式会社(江ノ電)前社長

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ふかや けんじ / Fukaya Kenji

江ノ島電鉄株式会社(江ノ電)前社長。1949年2月、東京生まれ。父は国鉄職員。1971年4月、日本大学理工学部土木工学科卒業後、小田急電鉄㈱入社。経堂保線区長、大和駅改良工事事務所長を経て、1988年工務部施設計画課長で大規模建設工事を担当。1997年運輸部長、1999年工務部長、2001年執行役員運転車両部長。2003年箱根登山鉄道㈱出向後、小田急グループ箱根再編事業を担当。2005年箱根登山鉄道㈱代表取締役社長。2008年江ノ島電鉄株式会社代表取締役社長。地方鉄道および観光事業の活性化に他社・地域と連携して取り組む。2014年同社相談役。2015年6月退任。

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