卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択

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ここまでの東北大学の主張を時系列に整理すると以下のようになる。

・東北大学テニュアトラック制度は、あらかじめテニュアポストを確保している本来のテニュアトラック制度である(2019年の文科省のヒヤリングに対する説明)
・東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないあらかじめテニュアポストを用意していない(2023年秋の東洋経済の取材に対する回答)
・東北大学テニュアトラック制度の研究者でも、卓越研究員事業に申請したものは、本来のテニュアトラックである(今回の東洋経済の指摘を受けた文科省・髙見室長への説明)

つまり、東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないが、例外的に一部、本来のテニュアトラックでの雇用が存在していたことになる。

申請書の中に「名ばかり」の証拠

しかし、東北大学のこうした説明を真に受けることはできない。

東北大学は当時の卓越研究員事業の申請書に、テニュアトラックで採用された若手研究者が審査を経てテニュアのポストに昇格できる条件について「優れた業績を有すると認められた場合」という本人への評価のみにとどまらず、「かつメンター部局(理学部や工学部など受け入れ先の学部)の採用計画に合致する場合」と記していたからだ。

繰り返しになるが、テニュアトラック制度では若手研究者がテニュアへの昇格審査に合格した場合に就くテニュアのポストは、テニュアトラックとしての採用時にあらかじめ確保しておかなければならない。そのため、本来のテニュアトラック制度なのであれば、テニュアへの昇格条件として「採用計画に合致する場合」という但し書きが付くことはありえない。

この申請書の記述内容からみても、東北大学が卓越研究員事業に申請したポストはやはり、あらかじめテニュアポストを用意していない名ばかりテニュアトラックだったように映る。

研究者の雇用問題に詳しい一般社団法人「科学・政策と社会研究室」の榎木英介代表は、「東北大学の主張は詭弁、後付け、言い訳にしか見えない。これが国際卓越研究大学になる大学なのかと唖然とする。こうしたやり方を許せば研究の世界でのモラルハザード(道徳観や倫理観の欠如)につながる。東北大学には組織体として問題があり、国際卓越研究大学に値するものではない」と指摘する。

東北大学は新たに設けられた「国際卓越研究大学」に、今2024年度に認定される見通しだ。そうなれば、東京大学や京都大学を差し置いて、東北大学が卓越大の第1号となり、政府が設立したファンドから年間数百億円規模の支援を受けられる。当然、それに見合う高いガバナンスが求められるはずだ。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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