中国製鋼材、輸出量急増の陰に「単価3割減」実態 需給バランス崩れ、在庫の見切り売りが海外へ

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中国国内で急増する鋼材の在庫が、見切り値で輸出に向かっている。写真は輸出される鋼材を検査する税関の係官(山東省の青島税関のウェブサイトより) 

中国製の鋼材の輸出量が急増する一方、輸出単価が大幅に値下がりしていることが、最新の貿易統計から明らかになった。

4月12日に中国海関総署(税関)が公表したデータによれば、2024年1~3月期の鋼材輸出量は2580万トンと、前年同期比30.7%の大幅な増加を記録。中でも3月は単月の輸出量が988万8000トンに上り、月間輸出量としては2016年7月以降で最大だった。

ところが金額ベースで見ると、1~3月期の鋼材の輸出総額は203億4430万ドル(約3兆1144億円)と前年同期比12.9%減少した。輸出額を輸出量で割った単価は1トン当たり788.5ドル(約12万708円)。前年同期との比較では、輸出単価が33.4%も下がった計算になる。

「1~3月期の鋼材輸出の急増は、主に2つの要因がある。第1に、(国内の鋼材相場が下落したため)価格の安さから輸出の引き合いが増えたこと。第2に、国内の鋼材需要が低迷する中、(鉄鋼メーカーや商社が)在庫を積極的に輸出していることだ」。鉄鋼業界のベテラン関係者は、財新記者の取材に対してそう解説した。

鉄鋼メーカーは減産せず

中国の1~3月期の鋼材市場は、春節(中国の旧正月、今年の元日は2月10日)が明けた後も需要が回復せず、鉄鋼メーカーや商社の在庫がにわかに急増した。

需要サイドでは、不動産業界の(新規プロジェクトへの)投資縮小に歯止めがかからず、地方政府の公共インフラ投資も、地方財政の悪化や(地方政府傘下の投資会社の)資金調達難などから計画の遅れが目立つ。そんな中、鉄鋼メーカーや商社の多くが在庫の見切り売りに走っている。

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にもかかわらず、供給サイドでは需要の低迷に対応した減産の動きは見られなかった。中国鉄鋼工業協会がまとめた大手鉄鋼メーカーの1~3月期の生産量は合計約2億100万トンと、前年同期比でほぼ横ばいだった。

こうした需給のミスマッチが、在庫のさらなる膨張を招いた。情報サービス会社の「我的鋼鉄網」のデータによれば、中国国内の鉄鋼製品の在庫量は3月28日時点で2341万1900トンに上り、2023年末時点より75%も増加している。

(財新記者:羅国平)
※原文の配信は4月12日

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