アルコール業界をいら立たせる2つの「警告文」 酒はタバコと同じ運命をたどることになるのか
世界的に見ても、アルコール飲料に対し健康に関連した何らかの警告を義務付けている国は4分の1にすぎず、義務化された警告の文言も概して曖昧なものにとどまっている。
アメリカが最後に警告ラベルの文言を変更したのは1989年で、妊娠中や車の運転前、重機の操作前の飲酒を思いとどまらせる文言と、アルコールが「健康問題を引き起こす可能性がある」と曖昧に認める文言の表示がこのときに義務付けられた。
酒類メーカーと酒類輸出国は猛反発
権利擁護団体「アルコール・アクション・アイルランド(AAI)」のシーラ・ガルヒーニーCEOは、アイルランドでがんリスクの表示義務化が実現するまでに10年以上がかかったと話す。ガルヒーニー氏によると、取り組みは2012年、アイルランドで多発する飲酒関連死を解決するために設置された団体が警告ラベルを含む一連の対策を提言したことに始まる。
提言の多くは2018年に法制化されるまでに骨抜きにされたが、表示義務は無傷で通過。議員らが具体的な文言やデザインを決定するのに、さらに4年を要した。
詳細が決定されていくにつれ、アルコール飲料企業は抗議活動を強めていった。ヨーロッパの主要なアルコール飲料輸出国のグループは2022年、アイルランドの発がんリスク表示ラベルは自由貿易を妨げるものであり、飲酒被害の軽減という目的に対しても不適切または不釣り合いだとして、欧州連合(EU)の執行機関であるヨーロッパ委員会に正式な異議申し立てを行った。
ヨーロッパ委員会はアイルランドの政策に異議を唱えなかったが、これを受けてイタリアのアントニオ・タヤーニ外相は「地中海の食文化に対する攻撃」と呼んでアイルランドの提案を非難した。同外相はツイッターで、アイルランドの発がんリスク表示ラベルの文言は「適度な飲酒とアルコール乱用の違いを考慮していない」と主張した。