その根拠は、アメリカを除けばNATOの財政力も軍事力も圧倒的にロシアより劣勢だからだ。NATOのストルテンベルグ事務総長は2月、加盟各国が防衛費を増額し、加盟31カ国(当時)のうち18カ国が、国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に増やす目標を達成する見通しを明らかにした。わずか3カ国のみだった2014年からは6倍の水準になるとはいえ、ロシアとの戦争に対応できる戦力を持てていない。
またNATOは、ウクライナへの武器供与を調整するアメリカ主導のウクライナ防衛連絡グループ(UDCG=NATO加盟国を含む56カ国)をNATOに移管することも検討していて、7月のワシントンで開かれるNATO首脳会議での最終決定を目指している。
課題となっているUDCGの強化
ウクライナ紛争初期段階で立ち上げたUDCGは、ロシア軍の侵攻を阻止するうえで重要とされたウクライナへの数百億ドルの装備、武器、その他の援助を迅速化したとされている。
だが、武器供与の遅延が目立ち、ウクライナ側は日々、多くのウクライナ兵が命を失っていることに悲鳴を上げている。それに西側同盟国は国内の政治的状況変化から供給の安定性を確保できていない。そのため、今回の協議ではUDCGの耐久性強化が課題の1つとなっている。
トランプ氏のホワイトハウス復帰を欧州が懸念する中、UDCGのNATOへの移管は、当面のウクライナ戦争に対する西側の支持を固める重要な動きとなると専門家は見ている。
現在の状況では、アメリカの国内政治が影響して追加支援の確約が取れないだけでなく、ハンガリーなど、ロシア寄りの国はウクライナ支援に後ろ向きで、加盟各国の国内政治に振り回されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら