原発作業員の「被曝」問題、刻々と迫る作業員の確保難、安全網の構築はいまだ途上
3月時点で福島第一では3人の下請け作業員が不十分な管理下で被曝している。放射線業務従事者の指定のされていない女性職員が、線量限度を超える被曝をしていたことも判明している。こうした状況にもかかわらず、労働基準監督官が監督指導のためようやく管理区域内に立ち入ったのは、5月末のことだ。
ある1次下請け会社の30代の男性は、震災当日も福島第一で作業に従事していた。その後退職したが、5月に入り所属会社から突如、放射線量の測定を勧められた。
不安を覚えた男性はいわき市の東電施設まで測定に行った。交通費は自腹だった。ところが、肝心の検査結果は「東電の許可がないと教えられない」として、数値の開示を拒まれたという。
事故後20日で、原発作業員の本来の年間被曝限度である50ミリシーベルトを400人以上の作業員が突破、100ミリシーベルトという5年間での被曝限度すら120人超が上回っている。
高線量被曝を否定する政府と現地の温度差大
厚生労働省は震災発生4日後の3月15日の段階で、今回の緊急作業時の被曝限度を、従来の100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げる省令改正を行った。
放射線審議会は半日のメール審議で妥当と答申しているが、数値の説明は不十分であり、上限値引き上げという結論ありきだったことは否めない。「緊急作業」の内容やその対象者も限定されておらず、福島第一関連の作業は、250ミリシーベルトまで行える、というように、広く解釈されかねない。