原発作業員の「被曝」問題、刻々と迫る作業員の確保難、安全網の構築はいまだ途上 

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 こうした状況だけに作業員の被曝線量の把握、健康管理の徹底は必須だ。厚労省も専門部署を設置し、作業員の長期健康管理のデータベース構築に向けた検討会をスタートした。

関西労働者安全センターの西野方庸事務局長は、「長期健康管理のためには、法的根拠のない今の放射線管理手帳では不十分。労働安全衛生法による健康管理手帳の交付対象とすることを考えるべき」と語る。

万一の大量被曝への備えも欠かせない。「事前に血液を作るもととなる自らの『造血幹細胞』を採取・保存することで、大量被爆時の救命につながる可能性が高まる」。虎の門病院血液内科の谷口修一部長は主張する。

採取は数日間で済み、大きな副作用はないとされる。国立がん研究センターや日本造血細胞移植学会などの専門医も賛同している。今国会でも谷口医師らの提案の採用を求め、たびたび取り上げられている。

ところが政府は一貫して「採取は不要」との考えを示している。「十分な国民の理解が得られていない」「高線量被曝リスクはない」などとして、原子力安全委員会等が不要と判断しているというのがその理由だ。

これに対して、福島第一、第二の産業医として事故後も現地で診察を行う愛媛大学大学院の谷川武教授は、「高線量被曝はありえないなどというのは、現場を知らない議論。現地との温度差を強く感じる」と批判する。

本格的な夏場を迎え作業員不足が懸念される中、一部では被曝限度の再度の引き上げも語られるが、「労働者保護の観点から絶対許されない。全身全霊で阻止する」(厚労省幹部)。

厚労省は作業員養成の仕組み作りを経済産業省に求めているが、いずれにせよ高度な技能者の養成には数年単位の時間を要する。当面は現役の作業員に頼るよりほかない。

冒頭の30代の作業員は、「カネではない。俺たちしかいない、という使命感で働いている」と力を込める。

彼らの高い士気に報いるためにも、重層的な安全網の構築には、一刻の猶予も許されないはずだ。

(週刊東洋経済2011年7月23日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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