超高額Vision Proでアップルが実は考えている事 アップルの「次の屋台骨」になる可能性は?

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だが、これが「ポストPC」「ポストタブレット」だったらどうだろうか?

現在のディスプレイが持つ「四角い画面の中で作業する」という制約を超え、主に屋内で、自分がいる空間を生かし、作業をしたりコンテンツを楽しんだりするデバイスは、十分に可能性がある(写真4)。実際、Vision Proではそういう働き方・楽しみ方がすでにできる。

たくさんのウインドウ
写真4:Vision Proをつけると、たくさんのウインドウを自分の好きな場所に置いて作業できる。もちろん、現実にはディスプレイを置く必要がない(筆者撮影)

コストや重量はもちろん、操作性など、いろいろと改善すべき点はある。だが、Vision Proをつけてみると、四角いディスプレイから空間全体がディスプレイとなった世界の可能性を確かに感じられる。

テレビやPC、タブレットとそれらに使われるディスプレイすべてが1つの機器で置き換えられるとすれば、いくらなら支払うだろうか? 3499ドルは高いかもしれないが、これが1500ドル・2000ドルになると、話は変わってくるだろう。

課題は「頭に何かをかぶる」という不便さ

現状、スマホを置き換えるヒット商品を作るのは、どの企業にとっても困難なことだ。アップルも、ストレートに「ポストiPhone」を作ってはいない。しかし、PCやタブレットなどの世界が変わるなら、スマホもその影響を受けるだろう。

スマホの時代になってもPCはなくならず、健在だ。タブレットという新しい市場も生まれた。それらが変わるとすれば、その市場インパクトは十分に大きい。

アップルは、そういう変化が数年後に来る可能性に賭け、Vision Proを作ったのだろう。メタを含め、他社も発想としては同じようなものを持っているので、彼らに後れをとるわけにはいかない。

課題は「頭に何かをかぶる」という不便さが、新しい利便性をもってしても超えられない可能性がある、ということにある。Vision Proもそのジレンマから抜け出してはいない。

逆説的だが、だからこそアップルは、「今は儲からなくとも、未来を見せるデバイスを世に問う」賭けに出て、突破口を見出そうとしたのではないだろうか。

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西田 宗千佳 フリージャーナリスト

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にしだ むねちか / Munechika Nishida

得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、『アエラ』『週刊朝日』『週刊現代』『週刊東洋経済』『プレジデント』朝日新聞デジタル、AV WatchASCIIi.jpなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。著書に『ソニーとアップル』(朝日新聞出版)、『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)、『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』(アスキー新書)、『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組 』『電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(すべてエンターブレイン)、『リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ』(TAC出版)、『知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?』(共著、徳間書店)、『災害時 ケータイ&ネット活用BOOK 「つながらない!」とき、どうするか?』(共著、朝日新聞出版)などがある。

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