NTT西日本「トップ辞任後」に試される改革の真価 新規事業の育成託された「異色社長」は引責辞任
就任初年度となる2022年度決算は減収減益に沈み、2023年度も第3四半期までの累計決算は減収減益となっている。とくに営業利益では、両期間とも前期比で1~2割の大幅な減益だ。固定電話の落ち込みに加え、電気料金高騰などコスト面の影響が大きかった。
新規事業の売り上げ比率についても、2023年度通期には4割弱となる見込みではあるものの、「2025年度に向けては成長分野の伸びが期待できるようになってきたが、(同年度に5割達成というのは)依然として厳しい目標」(森林氏)という。
森林氏は経営改革の進捗について、「まだ道半ば。(退任することになって)個人的には本当に残念」と悔やむ。一方で、「2023年度はまだまだ(数字として)上がり切っていないが、今後2~3年かけて伸びていく下地ができてきている」と強調し、社長として在籍した間に種まきはできたとの認識を示す。
具体的に成長を見込んでいるのは、自治体や学校向けのDXのほか、高速光回線の「フレッツ 光クロス」や、子会社のNTTソルマーレが展開する電子漫画などだ。
とくに自治体向けのサービスでは、2023年5月からマイクロソフトと提携し、同社のサービスを共同で提案していく体制を整えていた。2025年度末までにすべての自治体が業務システムの一部について、行政向けITプラットフォーム「ガバメントクラウド」への対応を義務づけられていることなども追い風になるとみられ、「2024~2025年にかけてかなりの伸びが期待できる」(森林氏)。
後任社長はNTTらしい“守り”の人事?
これらの事業を“収益柱”に伸ばす工程は、4月から新社長に就く北村亮太氏の手に委ねられる。
1988年に分割前のNTTに入社した北村氏は、森林氏よりも入社年が4つ下。NTT東と持ち株会社であるNTTでの勤務経験が長く、NTT西には2018年から4年間、取締役として勤めたこともある。
まさに、これまでのNTTグループらしい順当な人事ともいえる。海外畑という異色の経歴を持ち、当初から“攻め”の姿勢を強く打ち出していた森林氏と対比すると、まずはセキュリティ対策などの“守り”を優先したという見方もできるだろう。
折しもNTT西が本社を置く大阪では、2025年に「大阪・関西万博」も控えている。NTTグループにとっては、社運をかけて開発・社会実装に取り組む新たな通信技術「IOWN構想」を、国内外に向けて披露する場となる。NTT西は万博会場の通信環境構築などの重大な役割を担うこととなり、NTTグループの顔に泥を塗るようなミスは決して許されない。
セキュリティの強化や万博対応、そして森林氏が遂げられなかった新規事業の育成を着実に実行し、NTT西の変革を導くことができるか。新社長が背負う任務は大きい。
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