大正製薬、ローランドDGにみる「様変わりのMBO」 株主を納得させられる「TOB価格」がより重要に

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ところが、プリンターやミシンを手がけるブラザー工業が3月13日、1株5200円で対抗TOBを行うと表明した。ブラザーはローランドDGにTOBの意向を知らせていなかった。メドとする5月中旬にいざ実行となれば、いわゆる「同意なきTOB」となる。

同意なきTOB自体は珍しくなくなってきている。23年にはニデックが工作機械大手のTAKISAWAに実施。福利厚生などの運営を代行するベネフィット・ワンに対しエムスリーが先に進めていたTOBには、第一生命HDが横やりを入れた。この2つの同意なきTOBは成立している。

取締役が負っている義務

TOBに応募するかを決めるのが株主である以上、ローランドDGのMBOの成否はTOB価格に左右されそうだ。同社の株価は3月21日の終値で5480円。双方の提示した価格を上回る。3月27日までのタイヨウによるTOB成立には暗雲が漂い始めている。

ローランドDGは、取締役会などでの検討を経て、ブラザーの対抗TOBに推奨・非推奨の意を表明する予定だ。MBOを成立させるには、株主が納得するTOB価格をタイヨウに提示してもらう必要がある。

M&Aの実務に詳しい太田洋弁護士は、「MBOのように会社が“身売り”する状況になれば、取締役は株主の利益に配慮する義務を負う。基本的に価格が低いほうのTOBに取締役が賛同するハードルは高い」と指摘する。

また「ファンドと組んだMBOに対し、事業会社からこうした対抗提案が出たことは驚き」(太田弁護士)とも話した。価格など条件面で従来以上に精緻な積み上げがなければMBOが実現しない時代がやってきた。

梅垣 勇人 東洋経済 記者

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うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

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