道長から厚い信頼「安倍晴明」権力者達が頼る実力 40歳の時はまだ学生、遅咲きながら政権で活躍

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実行犯は兼家の4男にあたる藤原道兼だ。一緒に出家すると見せかけて、花山天皇を寺へと連れ出して、剃髪を見届けたうえで、自分だけ抜け出している。

『大鏡』によると、道兼は退出時にこんな言い訳をしたのだという。

「ちょっと失礼して、出家前のこの姿を父の兼家に見せてから、天皇とご一緒に出家する事情も伝えたうえで、必ず戻って来ましょう」

(罷り出でて、おとどにも、変はらぬ姿、今一度見え、かくと案内申して、必ず参り侍らむ)

ここで騙されたことに気づいた花山天皇。「私をだましたな」(「珍をばはかるなりけり」)と悔しがるが、後の祭りであった。

「寛和の変」を予期した安倍晴明

結果的に、兼家の陰謀計画は成功に終わったが、危うい場面もあったらしい。

同じく『大鏡』からの逸話で、道兼が花山天皇を寺へと連れ出そうとしていたときのことだ。

花山天皇が女御、忯子からの手紙を忘れてしまったことに気づく。忯子は花山天皇が最も愛したとされる女御だが、17歳の若さで早世。失意の底にいる花山天皇を見て、道兼は出家に誘ったとされている。

そんな忯子からの手紙を「日ごろ破り残して御身も放たず御覧じける」、つまり、普段から肌身離さず持ち歩いて、事あるごとに読んでいたのに、宮中に忘れてきてしまった。

花山天皇が「しばし」といい、取りに戻ろうとするが、道兼は容赦なかった。「どうしてこのように、未練がましく、お思いになりなさったのですか」(いかにかくは思し召しならせおはしましぬるぞ)と説き伏せて、寺へと強引に連れて行くこととなった。

もし、花山天皇が翻意して出家をとりやめてしまえば、台無しになる計画だ。まさに綱渡り状態であり、失敗する可能性もあった。

それにもかかわらず、花山天皇の退位をいち早く予見した男がいた。陰陽師の安倍晴明である。

道兼が花山天皇を連れ出したときに、土御門通を東に向かって行き、ちょうど安倍晴明の家の前を通った。そのとき晴明はまだ、家の前を天皇が通っていることに気づいていなかったが、察知するものがあったらしい。手を激しく叩いて、こう命じたという。

「帝がご退位なさると思われる天の異変があったが、すでに成ってしまったようだな。宮中に参内して報告しに行こう。車の準備をしろ」

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