――どんな理由で、ニケシュ・アローラ氏を後継者候補に指名したのか?また、彼は事業をどう進めていくのか?
孫社長 5~6年前に初めて彼に会った。当時、ヤフージャパンは米ヤフーが作った検索エンジンを使っていたが、ヤフーがマイクロソフトに検索事業を売却した。その後に、マイクロソフトからライセンスを得て検索エンジンを使うのか、グーグルのエンジンに切り替えるのか、という選択肢があった。グーグルのエンジンを使うことになったのだが、その時の交渉相手がニケシュだった。
交渉は、相手の人柄や頭の良さがより見えるもの。お互いに利害関係をもって真剣勝負をしてみて、これは"ただ者"ではないと心から思った。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、ジャック・マーと同格レベルのすごさを感じたのがニケシュだった。彼の人格と洞察力と、ネットの情報革命に対する情熱など、複合的に深く感銘を受けて惚れ込んだ。そこで口説き落としたということだ。
アローラ代表取締役副社長(選任後に回答) 私は22歳の時、父から300ドルをもらい、2つのスーツケースを抱えてインドからアメリカに渡った。大学院で2つの修士号を取り、ボストンで投資関係の仕事をし、ドイツ、ロンドンではモバイルのスタートアップを始めた。その後、5年間ドイツテレコムで働き、この10年はグーグルで仕事をし、冒険を続けてきた。
今後、ソフトバンクでは多くの挑戦があるだろう。エネルギーと知性にあふれる孫社長の下で仕事をするのは容易なことではないが、ベストを尽くしたい。
株価に対しては強い責任を感じている
――取締役の報酬限度額に年額8億円という制限があるが、世界に出るのであれば、(副社長候補の)ニケシュ・アローラ氏や宮内謙副社長には10億円以上の報酬を払うなどして、世界的に優秀な人材を集めるべきだ。来年の決議事項に入れてほしい。
孫社長 宮内さん、よかったね。(ここで宮内副社長が「ありがとうございます」)。年俸についてはおっしゃる通り。そもそもニケシュはグーグルでの年俸は数十億円の上のほうで、日産のゴーンさんを何倍も上回り、毎年昇給するほどの大金持ちだった。私もソフトバンクに来てくれと言いつつ、心の中で「ありえないな」と。まさか決心してくれるとは思わなかった。世界のソフトバンクになるためには、優れた経営陣が集まれる経営環境にしなければならない。後押しして頂いてありがたく思います。宮内さんの給料も上げないと。
(注:同日提出のソフトバンクの有価証券報告書によれば、2015年3月期にアローラ氏ヘは165億5600万円の報酬(短期報酬145億円強、株式報酬20億円弱)が支払われている)
――戦略、戦術に関して孫社長以上の方は世界中で見当たらないが、株価が7100円でうろちょろしている。これを何とか救っていただきたい。また、柳井社長と永守社長の会社の株価は高い。これではさみしい。自社株買いを積極的にやるべきではないか?
孫社長 株価に対しては強い責任を感じている。今の還元の仕方が何年か後によかったと思っていただけるよう、しっかりとやっていきたい。
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