DV被害者を守る「シェルター」の厳しい実情 人命を守る活動に予算が十分に下りない

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本来なら、このようなワンストップセンターは全国各地に作るべきなのです。最初に駆け込んだところで、きちんと受け止めて話を聞いてもらい、心身の傷を癒やして、適切な捜査につなげていく。そうすれば、PTSDなどの2次被害を最小限に抑えることができます。

現在の体制では、被害者は警察に行けば根ほり葉ほり関係のないことまで尋ねられて、二重三重に傷つき、裁判をすれば加害者側の弁護士に、自分が悪かったかのような質問をされてさらに傷つく。だから、性暴力被害を受けても「誰にも言わない」若い女性が7割にも上るのです。

シェルターは9~17時仕事では無理

――福島県で行われた性暴力とDV被害者支援員の養成講座は、自治体や政府の予算ではなく、国際協力NGOオックスファム・ジャパンの資金援助で行われました。民間のおカネで民間支援団体が行政をトレーニングしています。

シェルターネットの近藤恵子さん

私は、DVや性暴力被害者のシェルターの運営は、もっと民間に任せてほしいと思います。政府にはもちろんおカネを出してほしいですが、被害者支援の実務は民間がつみあげてきたやり方でやらせてほしい。被害は24時間、いつでも発生しうるのですから、私たちの仕事は9~17時までのお役所仕事にはなじみません。

DV防止法ができて十数年経った今、民間支援団体で働く人たちの高齢化が課題になっています。支援者の中心は50~70代。若い人を採用したいけれど、民間の支援団体におカネが回らない現状では難しいのです。

――現在、民間のDV支援団体の予算規模はどのくらいですか。

平成21年度には、地方公共団体から、日本全国の民間DV支援団体に、合計1億4000万円が支払われました。民間委託の仕組みはシンプルです。大人1人1日7600円、子ども1人1日4000円が利用実績に応じて支払われるのです。公的なDVセンターには億単位の予算が使われていることと比べると、微々たる金額です。

要するに、民間支援団体には、滞在者がいないとおカネがまったく入ってきません。しかし、相談窓口は毎日ほぼ24時間開いており、ひっきりなしに寄せられる、人命のかかった相談に対処しているのです。

現在、日本全国に100以上の民間支援団体があり、そのうち68が私たちシェルターネットに加盟しています。民間のDV被害者支援団体は、1団体、年間300万円から2000万円程度の財源で運営しています。

繰り返しますが、問題は第1に、DV被害者の命を守ることが、政策の優先課題として認識されていないことです。DVがどれほど大きな人権侵害で、かつ社会に与える損失も大きい問題か、官僚も政治家も正しい認識をしていない。そのために、十分な予算が割かれない。

第2に、今ある予算と施設、人員が活用されていないことが問題です。もちろん予算自体も増やしていただきたいですが、国民のみなさんには、さまざまな課題がある中で民間シェルターが人命を救うために大きな役割を果たしていることを、知っていただきたいのです。

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