ツルハがイオン傘下へ「ドラッグ2兆円連合」の波紋 ファンドから全株取得、イオン急接近の背景
株主提案では鶴羽樹会長(82)の退任などを求め、ツルハとの委任状争奪戦が繰り広げられた。鶴羽家側の持ち分比率は1割以下と少なく、ツルハにとって苦しい戦いが想定される中、カギを握るのが大株主として13%超を有するイオンだった。
イオンは1995年からツルハと資本提携を結んできたが、経営に積極関与する姿勢ではなかった。イオンを中心に医薬品のPB供給等で協力するハピコムグループにツルハが所属する程度で、緩やかな連携にとどめてきた。
しかしツルハ株主総会の9日前、イオンは「会社提案に賛成する」と表明。同時に「大手同士の再編の重要性や、地方のドラッグストアの再編の重要性は、当社も認識している」と言及した。結果的にツルハは株主総会で勝利を収めたが、「イオンはツルハにかなり恩を売った形」(競合大手幹部)となった。
その頃からイオンは、ツルハに急接近していく。「昨夏から関係をもっと深めることについて協議を始めた」と、記者会見でイオンの吉田昭夫社長は明かした。オアシスの株主提案の時期と重なるが「オアシスがどうこうではなく、理念が合わさったため」(吉田社長)と答えた。
ツルハは独自路線を貫けるか
イオンによるツルハの子会社化が実現すると、ドラッグストア部門は“稼ぎ頭”となる。イオンの2022年度の営業利益2097億円のうち、総合金融の603億円、デベロッパー事業の452億円に次いで、ウエルシアは448億円を稼ぐ。化粧品や医薬品を取り扱うドラッグストアは、食品スーパーより利益率が高い。同年度のツルハの営業利益は455億円で、のれん償却次第だがイオンのポートフォリオ改善が期待される。
ツルハがイオンと組むメリットとしては、PB開発やアジア展開の連携などが挙げられる。「上場会社として経営の独立性は保たれるが、今後は3社共同で戦略を検討していくことになる」(鶴羽社長)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら