ヒット連発「スターツ出版」読者に寄り添う凄み ケータイ小説から20年、今もファンを作れるワケ

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電話が鳴り出してから2日目に、入社2年目の社員が「これ、TikTokでバズってるみたいですよ」と気付いた。正直、なんで本の表紙に音楽が付いてるだけの投稿がこんなにバズるんだ、と思いました(笑)。

とにかく、それがバズりまくり、口コミもいっぱい入ってくる。「生まれて初めて読んだ本で、体の水分が全部なくなるぐらい泣いた」とか、「私が泣いたからパパとママに見せたら2人も号泣」とか。読者が口コミで広げてくれたんですよね。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』表紙
TikTokでバズリ、大ヒット、映画化に至った『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』。終戦前にタイムスリップした主人公が、特攻隊の青年と恋に落ちる物語だ(撮影:梅谷秀司)

――TikTok戦略で意識されていることはあるんですか?

菊地:実は、当社では、お金をかけたプロモーション活動は積極的に行っていません。それより読者の自然発生的な口コミを重視している。これは、20年前の『Deep Love』や『恋空』のときと同じで、あのときはメールでしたが、それがTikTokに変わったという話です。

中高生たちのはじめての読書体験に

菊地:口コミがどんどん広がるうち、TikTokのコメントで「これって本屋に売ってるの?」というものを見つけました。本屋に行ったことがないから、本屋でそれを売っていることも知らないわけです。

TikTokの投稿を見て、中高生たちがみんな本屋に来てくれる。書店さんに聞いた話では、中高生がお店に来て、TikTokの画面を見せて「これをください」と言ってくるそうです。本屋に行ったことがないから、本の探し方がわからず、そうするパターンが多いと。

菊地社長
「こんなふうに、書店員さんにスマホを見せるそうなんですよ」と語る菊地社長(撮影:梅谷秀司)

――はじめての書店体験がスターツ出版文庫になっているわけですね。

菊地:そうですね。そして、「読んでみたら、とても面白かった。メチャ泣いた」という感想が多い。

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