生成AIの進化が広告業界にもたらす2つの課題 自主的に広告が作れる時代に代理店を通す意味

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それ以上に、コロナ禍でZoomなどのWeb会議が当たり前になり、PCやタブレット端末の画面に向かって会議することへの抵抗感が解消されたため、会議の相手が「人」である必要もなくなってきている。つまり、静止画やアバターに向かって会議することが増えているため、バーチャルなAIと対話することにも抵抗が薄れてきているのだ。

生成AIで提案内容を説明するための文章を作成して、ボーカロイドソフトで読み上げることは今でも簡単にできている。今後は生成AIに簡単なプロンプト(命令)を与えるだけで、クライアントとその提案内容に即したバーチャルな人物やキャラクターなどが生成され、場に応じてベースとなる声色やトーンなどを自動で選択したり、説明に適切な抑揚を付けたりするようになるだろう。キャッチコピーや映像といった「人の感性に訴えかける」商材である広告は、元々バーチャルな営業活動と相性がよいのだ。

生成AI時代における広告会社の商機は2つ

広告会社の業務は今後、大まかに「デジタルシフト」と「コンサルティングシフト」という方向に変革が求められるだろう。

デジタルシフトとは、ネット広告および広告関連システム開発といったデジタル関連業務に加えて、データサイエンスの知見を加味したデータ分析と将来予測業務に、より強く舵を切ることである。

そしてコンサルティングシフトとは、クライアントの経営課題にまで踏み込んだ施策の立案や、広告の成果の先にある売上や利益の確保といった実ビジネスへの貢献活動に、「広告ビジネスの枠を超えて」踏み込んでいくことである。

デジタルシフトに必要な広告会社の機能は、インターネットメディアとのリレーション構築能力と、ネット広告関連システムのインテグレーション能力である。かつてはテレビや新聞、雑誌といったマスメディアとの信頼関係構築に注力していたが、今後はグーグルやYahoo!、メタなどの大手プラットフォーマーの広告エージェント(代理人)としての役割をまっとうすることが、今以上に求められてくるだろう。

そして、コンサルティングシフトとは、データサイエンティストのようなスペシャリストによる高度な分析をもとにした、新規ビジネス開発のようなコンサルテーションである。これまで広告会社は、商品・サービスなどの認知度向上や、利用頻度を高めるためのムーブメントを起こすことを期待されてきた。しかし、今ではネット広告やSNSなどを活用して、自主的に広告やプロモーションを行うクライアントが増えてきている。今後は広告と同時にクライアントの売上・利益の向上や業務改革を実現するといった付加価値を付けないと、ビジネスチャンスは先細る一方だろう。

広告業界における2つの変革
広瀬 安彦 野村総合研究所 エキスパート研究員

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1972年、三重県四日市市生まれ。慶応義塾大学文学部卒、青山学院大学社会情報学研究科にて博士前期課程、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院にて博士後期課程を修了。大手印刷会社を経て2001年に野村総合研究所に入社。専門はインターネットによる広報戦略、データサイエンティストの育成、M-GTA(Modified GroundedTheory Approach)を用いた質的研究。明星大学経営学部非常勤講師、日本生産性本部 経営アカデミー講師。「NRIデータサイエンスラボ公式YouTubeチャンネル」で情報を発信中。

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