部品会社が「キャンピングカー」に参入する真意 サスペンションだけじゃなく車体販売も目論む

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これについて、担当者は「まだ公表できるものはない」と語る。ただし、車体のトランスフォーム機能は、前述のとおり、コストの問題があるため、新型へは投入しない方向性とのことだが、「室内に関しては、油圧技術を使った何らかのギミックを採用するかもしれない」という。具体的には明らかになっていないが、どんな機能や装備が投入されるのかは、今後の発表を待ちたい。

今後の展開

キャンピングカーコンセプト2024 TASバージョンの運転席まわりやキッチンスペース
キャンピングカーコンセプト2024 TASバージョンの運転席まわりやキッチンスペース(筆者撮影)

業界団体の日本RV協会がまとめた「キャンピングカー白書2023」によれば、国内における2022年のキャンピングカー保有台数は、前年より9000台増えた14万5000台。また、同じく国内における新車・中古車を合わせた販売売上合計額は、過去最高の762億円(対前年比120%)を記録したという。

そんな拡大傾向が続くキャンピングカー業界に、新規参入を目指すカヤバ。近年、「100年に一度の変革期」といわれる自動車業界では、多様な技術革新やIT関連などの新規企業参入も続いており、従来の事業だけでは生き残れない可能性も出てきた。そのため、ほかの部品メーカーなどでも、さまざまな新規事業に乗り出している。そんななかで、カヤバの新たな試みが、キャンピングカー業界やユーザーから、どのような反響を受けるのかが興味深い。

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ちなみにカヤバでは、キャンピングカー関連の製造を、全国にある製造拠点のうち、埼玉県にある熊谷工場で行う予定だ。理由は、従来、熊谷工場はコンクリートミキサー車などの特殊車両を手がけている場所で、「町工場的な雰囲気もある」ためだという。たしかに、キャンピングカーの製造は、1台1台を顧客のニーズに応じて行うため、大量生産は難しい。まさに、町の工場などで、職人が手作りで生産している印象がある。

そうした点は、コンクリートミキサー車などの特殊車両の製造も似ているのだろう。最近は、例えば、EVシフトなどの影響で、存続が危ぶまれていたり、実際になくなってしまった自動車関連の工場もあると聞く。カヤバの新規事業は、そうした「昔ながらの工場」で働く従業員たちの「雇用を守る」という意味でも注目だ。

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平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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