原子力研究の落日、使命を見失った学者たち--象牙の塔の「罪と罰」
かつては東大、京大など旧帝大を中心に、10の大学に学科が設けられていたが、イメージの悪化で学科の廃止や改名が相次いだ。93年には東大の原子力工学科も「システム量子工学科」に改称になり、04年には原子力関係学科が全国に一つもない“崖っぷち”まで追い詰められた。
こうした事態に、文科省は人材育成に動き出していた。「教える側の人材も含め、業界が先細りになってきている。国も一体となって人材育成を進めないと、将来成り立たなくなる」(文科省研究開発局原子力課の正岡秀章・開発係長)。
07年度より経済産業省と共同で大学向けの補助金制度「原子力人材育成プログラム」を設立。昨年11月からは産・官・学の連携の下、各界の知識や設備を共有して人材育成に生かすプロジェクト、「国際原子力人材育成イニシアティブ」を開始し、東芝の保有する臨界試験装置を学生の研究向けに開放するなどの試みが始まっていた。
00年代半ば以降世界的に盛り上がりを見せていた原発建設の機運、「原子力ルネサンス」を追い風に、08年には東京都市大に、昨年には東海大に、それぞれ学科が新設されるなど、大学にも復調の兆しが見え始めていた。
そんな折に起こった福島第一原発の大事故。学生の原子力離れが加速することは確実だ。国内に現在54基ある原発が最終的に廃炉となるまで、少なくとも数十年単位の歳月を要する。原子炉メーカーや電力会社でも技術者の高齢化が問題視される中、将来の人材育成は重い課題だ。