東南アジアで進む権威主義の深化と政治の王朝化 インドネシア大統領選でプラボウォ組が圧勝

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王朝支配や政治世襲、縁故主義は、アジアのお家芸といえるほど各国で根ざしている。大統領制、議院内閣制、独裁と統治形態の違い、発展度合いに関係なくほとんどの国で見られる現象だ。

イギリスやドイツなど欧州ではあまり例はないし、ケネディ家やブッシュ家などはあっても、アメリカのそれはアジアには遠く及ばない。

日本も例外ではないアジアのお家芸

インドネシアの選挙に際し、国立ガジャマダ大やインドネシア大の教授らは縁故主義について「倫理の欠如で国は統制を失っている」などと相次いで批判の声明を出した。フィリピンでは憲法に政治王朝を禁じる規定がある。

しかし各国の選挙結果からみてもアジアの多くの国の有権者が、政治王朝の出現や世襲に対して厳しい目を向けていないことは明らかだ。ネポティズムをさしたる抵抗なく受け入れているといえる。

共通項を探せば、農耕民族をルーツに持つ地域が広く、土地への執着が強いこと、富裕層にも大家族制が残り、一族がよりお互いを必要としていることなどだろうか。地域に長く染みついたクライエンテリズム(親分・子分関係)とも関係するだろう。ご主人様の子息を敬うのは当然という気風だ。

日本もまったく例外ではない。日本経済新聞によれば、2021年の前回衆院選の候補者の13%が世襲で、勝率は復活当選を含めて80%に達した。

一方で、非世襲候補は30%。ここで世襲の定義は①父母が国会議員、②3親等内の国会議員から地盤の一部または全部を引き継いだ、のいずれかに該当する場合としており、親族に首長や地方議員まで含めると3、4割は世襲とみられる。

さらに首相や大臣など政界で階段を上るほど、世襲の割合は高くなる。小選挙区制が導入された1996年以降の首相12人のうち、世襲でないのは菅義偉、野田佳彦、菅直人の3人だけだ。自民党に限れば1人を除いて世襲ということになる。

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