AKB商法を実は非難できないこれだけの理由 視聴形態が多様な時代の音楽チャートを考える

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礒崎:それが、ポールの場合、リッピングなどは伸びなかったのです。

常見:そうなんですね?なぜでしょう?あ、ひょっとして。ポールのファンって、みんな、もう音源を持っているんじゃないか、と。

礒崎:どうやらそのようですね。ランキングが上がるかなと思っていたのですが、大きな変化にはなりませんでした。

常見:私、前回の来日も行ったのですけど、よくメディアが報じる「老若男女が世代を超えて熱狂」なんてテンプレは嘘で、基本、中高年でしたね。あの高額のチケットを買えるのはそういう人たちで、もうすでに音源はひととおり持っているのですね。

要するに、単に「売れているか」だけではなく、「聴かれているか」どうか、しかも、どう聴かれているのかを可視化することが大事なのだと。それこそ、CDは売れるけどリッピングされないアーティスト、Twitterでかなり話題になっているアーティストなど、売れ方、聴かれ方、話題になるパターンの違いが可視化されるのでしょうね。

礒崎:そういう動向も見えてくるので、今までユーザーが抱いていた不信感を正しい方向へ戻してくれるのではないでしょうか。

チャートとは、何か?

常見:そもそも「チャート」って、何のためにあるのでしょうか?

礒崎:よく「日本人はランキング好きだ」と言われますが、やはり「売れているもの」「人気のあるもの」はモノを選ぶ指標として、みなさん興味を持ちますし、日頃から活用していますよね。

常見:「何が売れているか、人気があるかを示すものだ」と。そして、「みんなを導くものだ」と。もともとチャートは「海図」という意味ですからね。そういえば、「ベストセラーになるには、売れていることが大事である。売れているものが、売れるのである」という、当たり前のようで大事な法則を聞いたことがあります。みんな、買うのは売れているからという理由もあるわけで。

礒崎:私たちの運営している「Billboard Japan Hot 100」では、複合指標を使って、今支持されている楽曲やアーティストを導き、ユーザーに届けきちんと活用してもらうことが大切だと考えています。

常見:複合型チャートだ、と。YouTubeやSoundCloudなど音楽の聴き方が多様化した状況だと、セールスの指標だけで、楽曲やアーティストの影響力を計るのは難しいでしょうね。ビルボードのチャートは、昭和の『ザ・ベストテン』のような「時代の鏡」だと思いました。

礒崎:ありがとうございます。1970年代のセールスランキングは、今見ても「確かにこれが流行っていたよね」と言える“納得感”があったんです。私たちも10年後、20年後に過去のランキングを見ても、そんな納得感が得られるようなチャートをつくっていきたいと考えています。

常見:変な話ですが、チャートにこだわりすぎるのも問題ですけど、ないと困りますよね。

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