礒崎:ビルボードジャパンは、2008年からずっと新しいチャートづくりに取り組んできました。その際、まさに批判されているCDの複数購入について「はたして、これは悪なのだろうか?」と、そんな疑問を持つようになりました。
これからのチャートは、そこを含めて、楽曲の影響力を可視化していかなければいけないと思います。私たちのチャートには、「Look up」(CDがパソコンにリッピングされた回数のデータ)という指標があるのですが、これを見ると、AKB48も嵐もファンだけじゃなく、きちんと幅広いユーザーから支持されていることがわかりましたね。
常見:具体的に、ビルボードがつくった新しいチャートは、どういったデータを基に計算しているのですか?
新しいチャートづくりにYouTubeを導入
礒崎:複数のデータで調べています。私たちは、新しいチャートづくりに取り組んでいて、これまでもパッケージ実売データとダウンロード回数のデータを合算した「Sales」、ラジオ曲でオンエアされた回数を基にした「Radio」、PCでCDが読み取られた回数を基にした「Look up」、そして「曲名+アーティスト」についてつぶやかれた回数を基にした「Tweets」と、4つの指標を使っていました。2015年6月からは、そこに動画再生回数をもとにした第5の指標である「YouTube」を加え、さらにストリーミング歌詞表示回数を基にして「Sales」をブラッシュアップしました。
常見:「YouTube」を加えたことは、まさに今の時代、ユーザーに寄り添えていると思います。
礒崎:僕らとしては、「複数購入」されたCDがどんなふうに動いているのか、そこを追いたかったので「Look up」のデータが可視化できるのは面白いです。これにより、音楽がどう聴かれているかが可視化されます。CDのリリースタイミングだけでなく、その後も長い期間でリッピングやダウンロードされていることなどが見えてきます。
常見:なるほど。で、AKB48はどうなんでしょう?
礒崎:ちゃんと聴かれていますね。売れたCDがリッピングされているようです。
常見:実際、「恋するフォーチュンクッキー」などは、握手券が付いていない、ネットでのダウンロードでもよく売れましたし。
礒崎:今までは彼女たちが支持されている指標が「セールス」しかなかったので、不信感を抱くのは仕方ありませんでした。それがビルボードの複合チャートによって、別の指標が可視化され、やっぱり複数購入されるアーティストの楽曲もちゃんと支持されているところがわかりました。
常見:なるほど。最近のCDは、その「売り方」が批判されることが多かったですが、決してすべてアーティストや楽曲が悪いわけじゃないと。
礒崎:売れているものはちゃんと聴かれているのです。レコード会社の営業努力でもあるので、決して悪だとは言い切れませんね。やっぱり大きなライブやツアーがあると、CDがリッピングされる回数も伸びていきます。たとえば、この春は、嵐のツアーがあったので、それに合わせて彼らのCDがよくリッピングされました。
常見:そうですか、やはり、ライブに合わせてCDが売れたり、レンタルされるわけですね。そういえば、先日、私はポール・マッカートニーの来日公演に行きました。これで音源は聴かれたのでしょうか?
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