ここで難しいのは、企業の業績に大きな影響を及ぼすESG要因と、そうでないものを見分けることだ。ところが、企業が現在報告しているデータでは、投資家が判断するには不十分だ。
そこで、米国サステナビリティ会計基準審査会(SASB)が、80の業種の重要なCSR会計基準を米国証券取引委員会(SEC)のコンプライアンス規制に沿ってまとめ、データを充実させようとしている。調査では、CSRでよい成績を示す企業は、成績が悪い企業に比べ業績がよく、低リスクで株主利益も大幅に高い、という結果が得られている。
ESG要因こそ持続性の高い企業を育てる
ESG要因が企業の財務実績や株主利益に影響を及ぼす経路はいくつかある。たとえば、効率的なエネルギーや資源の利用はコスト削減に、人材の適切な管理は生産性の向上につながる。安全、衛生、環境に関するルールの厳格化は重大な事故のリスクを減らすことに、そして消費者にとって魅力的な新しいエコ商品やフェアトレード商品は売上高の増加につながる、といった具合だ。
具体例を挙げると、データセンターは平均的な商業ビルに比べ、10~20倍のエネルギーを使用するため、大量の温室効果ガスを排出する。グーグルが建設した各データセンターが使用するエネルギー量は業界平均の50%で、同社に多大なコスト削減をもたらしている。
米化学会社デュポンは2011年以降、定量化可能な環境便益を有する製品の研究開発に8億7900万ドルを投資しているが、温室効果ガスの排出を削減する製品で年間20億ドル、風力や太陽光などの再生可能エネルギーで118億ドルの部門売り上げを記録している。
企業が投資家に対する受託者責任を果たすためには、金銭的な利益を超えて、長期的に業績に重要な影響を与える可能性の高いESG要因を採用する以外に選択肢はない。このようなインセンティブにこそ、世界をより持続可能な未来へと向かわせる可能性があるのだ。
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