ゆうパック「半日遅く」で私たちに起きる"影響" 2024年問題を間近に、積載率向上に少しは寄与?

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ちなみに、日本郵便の件ではなく一般論として話す。荷物が100個あったとする。その100個を、当日の時間内に運ぶのと、当日の時間内+翌日午前に運ぶのと、仕事量としては変わらないのではないだろうか。むしろ100個を当日の時間内に運び終えないと、翌日の荷物が加算されるだけではないだろうか。

ただ、そのようなことにはならない。経済産業省「政策動向のご紹介
~物流の2024年問題~
」によると、2020年度のトラック積載率は約38%しかない。つまり62%の余力があるのだ。いつもパンパンの積載で運んでいるわけではない。だから、さきほどの例でいえば、近接地域や近接家屋に細かく運ぶのではなく、まとめて効率的に運んだほうがよいことになる。

話を日本郵便に戻す。利用者からすれば、半日の配達期間を延ばすだけでは意味がないのではないかと感じるかもしれない。ただ積載効率と配達の向上の観点からすると寄与するだろう。

実際に、前述の経産省の資料でも、現状のトラック積載率が約38%とあまりに悪いので、せめて積載率を約50%にしたいと目標が掲げられている。

個人として私たちにできること

そして、荷物を受け取る側として私たちにできることがある。個人としてはなんといっても再配達の削減だ。

事実を述べれば、私たちは「再配達を減らすべき」と社会的なコンセンサスや、宅配ボックス設置により、再配達率は減少している。2018年に15.5%あった再配達率は、2023年に11.1%となっている。減少しているとはいえ、莫大な数(約50億個)の11.1%だから絶対数は多い。この数を減らすことが必要労働力の減少にもつながっていく。

私が注目するのは、再配達を依頼する理由としては上位2つが圧倒的だ。「配達日時が指定できない商品だった」「配達に来ることを知らなかった」である。そこで活用がいっそうに求められるのは、まずは置き配と、宅配ボックスだ。次に、コンビニエンスストアでの受け取り、駅等のロッカー受け取りなど、現代ではさまざまな受け取り方法が広がってきた。

さらに各事業者がスマートフォンのアプリなど通知サービスを展開している。これらを活用したい。かなり細やかな状態を知ることができるし、変更等もたやすい。

そして、すこし精神的なことも書いておきたい。現在、政府は物流危機の対策として置き配のポイント付与の実験を進めている。また各EC事業者も置き配での配達を推薦している。それとともに、私たちは社会の持続性確保のために、「置き配+いつ配送してくれてもいい(配送予定日がズレてもいい)」という選択を積極的にせねばならない。だから指定日配送ならぬ、非指定日配送である。急ぐのはクールではなく、「いつでもいい」がクールな世界。

そして、販売側からすると「送料無料」と書いて訴求性をあげたいのはわかる。しかし送料無料とは、あくまで消費者が払う金額が無料なのであって、実際には業者間での費用は発生している。このフレーズゆえに、消費者はいくら再配達してもコストがかからないような感覚を有してしまった。その感覚はこの数年でだいぶ改善したとはいえ、再認識したいのは物流が人件費の塊であって、社会の維持は私たち一人ひとりにかかっている点だ。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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