インドネシア新型電車「中国受注」でも日本に商機 国産車は日本製機器採用、大統領選も影響?
それでも政府と約束した以上プロジェクトを止めるわけにはいかず、今年1月下旬に最初の1本(TS01R)が6両ずつに分けて、KCIのデポック車両基地からINKAマディウン工場まで配給輸送された。今後、INKAが独自に車体を調査し、図面を引き直すことになると思われるが、困難を極めるだろう。何らかの日本側からの支援が期待される。あるいは、車体のみ再利用し、それ以外は全てゼロから作り直すということになる。それでも、元々日本の車両なだけに、日本製品が採用されたほうが理にかなっている。
ただ、無事にプロジェクトがスタートしたとしても、6000系の初期編成は台枠劣化から改修の対象にならないため、予定されている19本全てを延命することは不可能だ。チョッパ制御編成の改修は05系の数本のみに限られる可能性が高い。比較的導入時期の新しい205系であっても、ジャカルタで営業を開始してから10年が経過する。また、日本国内で活躍する同形式も数が少なくなり、徐々にスペアパーツが減少している。
また、VVVFインバーター制御に改造された6000系車両でも、古いものでは改造から20年以上が経過しており、こちらの電子部品の劣化も始まっている。リニューアル対象がチョッパ制御車ではなくこちらのグループに変更され、形式ごとに別のメーカーを選定することも予想される。すると、日本メーカーに圧倒的に有利な状況となる。あるいは、リニューアルプロジェクト自体が中止となり、新車の発注に切り換えられるかである。
大統領選の結果次第で変化も
とくに日本とインドネシアの関係者が注目しているのは、2月14日の大統領選の行方だ。鉄道プロジェクトは、工業製品国産化と合わせて現職ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領の肝煎り政策だ。よって、大統領選の結果次第では、これまでの方針が大きく変わる。ジョコウィ路線を引き継ぐ候補が当選したとしても、個別の政策を全て引き継ぐとは限らず、ややもすれば中古車両の輸入規制が緩和する可能性すらある。それだけでなく、既存車両の改修費用である2.23兆ルピアもの予算があれば、12両編成10本程度は新車で調達できてしまう。
①の新型車両は、CRRCがよほどの働きぶりを見せない限り、年内の導入は困難だ。経年車両のリニューアルも、現時点で設計すらできていないのでは、年内の導入は絶望的である。となると、KCI・政府間の公約である2024年の車両導入は果たせない。その場合、何らかの代案が必要となる。これも合わせて日本側は注視し、営業活動を進めていくべきだろう。
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