サービスエリアに礼拝堂「イラン」の高速道路(2) カフェやレストランだけじゃない充実ぶり

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イスラム圏の国ならでは特徴は、礼拝のための専用の部屋が設けられていることである。これは、これまで訪れたイスラム教国、例えばモロッコのサービスエリアなどでも見られたが、今回いくつか立ち寄ったサービスエリアには、モスクそのものが併設されているところも見られた。

サービスエリアに併設されていたモスク(筆者撮影)
サービスエリアに併設されていたモスク(筆者撮影)

イランはイスラム教の中でもシーア派が強く、人口のほぼ9割がシーア派の教徒である。もう1つの宗派で、他のイスラム諸国では主流となっているスンニ派では、1日に5回メッカの方角を向いて礼拝を行うが、イランのシーア派では多くが日の出前、昼、そして日没後の3回であるとガイドから説明された。

それでもイスラム教徒にとって礼拝は重要な儀式であり、空港や駅、ホテルなどにも必ずと言ってよいほど礼拝室が設けられている。サービスエリアに礼拝する場所があるのも、当然なのだ。

プジョーにルノー…、フランス車が多い

海外のサービスエリアでは、停車しているクルマのメーカーや車種の傾向を見るのも楽しみだが、イランで最も目立つのはフランスのプジョーである。ただし、これらは輸入車とは限らず、イランに3社ある自動車メーカーのうちの1社がプジョーのクルマを生産しているためだ。

他社もシトロエンやルノーなどとの関係が深く、それらの車種を生産しているため、全体としてフランス車の割合が高い。ちなみに、イスラム革命以前は日本車の走行も多かったようだが、トヨタ車やニッサン車を見かけたのは数えるほどであった。

サービスエリアに停車中のツアーバス。荒々しい山を見ながらのドライブは最高だった(筆者撮影)
サービスエリアに停車中のツアーバス。荒々しい山を見ながらのドライブは最高だった(筆者撮影)

イランは現在もアメリカによる経済制裁を受けており、スターバックスやマクドナルドの店舗を一切見かけないだけでなく、欧米系のクレジットカードもほぼ使えない。さらに、インターネットについても、X(旧Twitter)やFacebookなどアメリカ資本のSNSサービスだけでなく、LINEも接続できない状態にある。

こうした不便さはあるけれど、豊かな食材から生み出されるバラエティに富んだ料理に恵まれ、壮麗な遺跡や建築を眺めながらのイランの旅は、高速道路の走行も含めて大変、充実したものであった。

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佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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